感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
129
下巻を残すが、今まで読んだバルザックの中で一番夢中になって読んでいる。狡い者、小賢しい者たちはたくさんいるが、地の底から手を出して他人を食い尽くそうとするような輩が今のところは見受けられないからかな。ユロ婦人は善人に区分けされる? 私はしたくない。こういう人が愚かな夫をさらにバカにする。従妹ベットについては、気の毒かどうなのかは決めかねる。「偉大な芸術家なら、今どき称号のない王侯だよ。名誉と金があるからね」「パリでは、しばしば、いもしない美人に向けられた微笑みを通りがかりの誰かがもらったりすることがある」2018/02/28
syota
28
恨みとひがみ、劣等感で凝り固まった醜女ベットからは、こうした女の恐ろしさがひしひしと伝わってくる。基本的にはネクラな話だが、美貌と色香で男を操る妖婦ヴァレリーが登場してベットと手を組むあたりから、場面は華やかに、艶っぽくなっていく。まるで廓の売れっ子太夫と遣り手婆のような二人の手腕には、舌を巻くばかり。反面、年甲斐もなく女に入れ込み、いいようにあしらわれるユロ男爵の姿は、滑稽でもあり哀れでもある。世界を動かすのは男だが、男を動かすのは女、という昔読んだ言葉を思い出してしまった。[G1000]2016/04/14
みつ
26
バルザックには珍しくいきなり物語の渦中に放り込まれる。男たちは好色(ユロ男爵、クルヴェル)でなければ優柔不断(亡命貴族の彫刻家ヴァンセスラス)。女たちの中では、ユロ夫人を憎み続ける従妹のベットと冴えない役人に嫁いだ生来の「ファム・ファタル」ヴァレリー(鹿島茂氏が『悪女入門』で取り上げたひとり)が、ずば抜けて強烈なキャラクター。このふたりが奸計を巡らせて、男たちとその家族を破滅に向かわせようとするまでが上巻。男たちは翻弄され、ユロ家の夫人と娘も簡単に騙せそう。ふたりの協調はこのまま続くのか?・・で下巻へ。2022/07/18
ラウリスタ~
12
登場人物が多すぎて(そして一々説明するから)読むのがしんどいが、途中から流れに乗れる。ユロ男爵に嫁いだ田舎の美女アドリーヌ、その従妹のオールドミスという「脇役」がタイトルになっている。男爵家の娘オルタンスがこの従妹ベットの恋人を奪って結婚、ベットはあらゆるものを持ちながらも自分の唯一の愛人までも奪った男爵家への復讐を始める。ただこの物語、ユロ男爵、クルヴェル(元香水商人、ブサイクで金持ち)マルネフ夫人(貞淑ぶって男を破滅させる高級娼婦)など、いろんな主人公級の奴らがいて、複数の欲望がぶつかり合い複雑怪奇。2020/04/09
noémi
11
いや~、面白かったな!バルザックの中でこれが一番面白いかもしれない・・・(まだ、全部読んでないから断言できないけど)ユロ男爵とクルヴェルのアホさ加減は! あの人たち、絶対にマゾ体質ですね。男はアホだけど、女はどの人もどの人も狡猾。ヴァレリーは超一級品のワル。だけど、ベットもいいなぁ~、オールドミスの暗い情念としつこさがよく出ている。オペラ歌手のジョゼファもいい。最後の啖呵が「お人よしじいさん」だもの。しかし、フランスって女に優しい国ですよね。日本だったら「おのれ、この毒婦が!」で切り捨てご免になっちゃう。2011/02/28