内容説明
ウォーラーステイン「近代世界システム」の西洋中心主義を徹底批判し、地球全体を覆う単一の世界システムの存在を提唱。世界史が同時代的に共有した「近世」像と、そこに展開された世界経済のダイナミズムを明らかにし、全世界の歴史界で大反響を呼んだ画期作の完訳。
目次
第1章 現実の世界史とヨーロッパ中心的社会理論の対決に向けて
第2章 グローバルな交易の回転木馬、1400~1800年
第3章 貨幣が世界をめぐり、そして世界をまわす
第4章 グローバル・エコノミー―比較および諸関係
第5章 横に統合されたマクロ歴史
第6章 なぜ西洋は(一時的に)勝ったのか
第7章 歴史記述上の結論と理論的含意
著者等紹介
山下範久[ヤマシタノリヒサ]
1971年大阪府生。東京大学教養学部卒。ビンガムトン大学社会学部大学院を経て、現在、東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍。専攻・世界システム論
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感想・レビュー
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井上裕紀男
12
交易に貨幣、人口と生産性に加えて金融側面を丹念に追っていくと人類の道程はどうなるのか?地域の盛衰時期や勢力が欧米一辺倒の通史では語りきれず、多方面から世界システムを検証する余地があることを知ることができます。 西欧が恐ろしい奴隷制度と新大陸を得て勃興したのはここ数百年。隆盛を誇った王朝が伝染病で消え、資源や人も世界の中心足り得た中国やインドが一時的に衰えたりもする。長期循環で見るなら、今見ている世界が全てではない。他システム論への反論や結論に至る過程が冗長な箇所もありますが、世の中の見方が広がります。2024/02/03
いとう・しんご singoito2
2
世界全体が銀を基軸通貨とした一体的な世界経済/世界システムであり、多様性の中に統一性があったと主張する本。欧州中心主義の世界史観を疑問視し、周辺地域に拡張した歴史観に取り組んできたブローデルやウォーラーステインすら否定して、全世界規模の歴史というコペルニクス的転換を主張している。「鎖国」は欧州のインフレによる銀流通の縮小に対する徳川幕府の保護主義的対応だった(P416)という観察はその一つの真骨頂。20年前の本だけれど、その内容は非常に今日的で刺激的。世界史や経済史に興味のある人は絶対にお奨め!2021/03/31
読書履歴
1
だいぶ以前に読んだので、再読しないと。2007/07/18
日々
0
6.5点 主流派への怨念に満ちた本。2017/04/10
飯田健雄
0
「グローバル・ヒストリー」について アンドレグンダ―・フランクの『リオリエント』は面白かった。多くの「グローバル・ヒストリー」の研究は、14世紀~17世紀のヨーロッパと中東、インド、明・清の交易を扱っている。誤解を怖れずに言えば、研究者の心のうちは、22世紀は、オスマン・トルコ帝国、ムガール帝国、明・清帝国が形を変えて再興していくだろうと理解できる。なるほど、「グローバル・ヒストリー」という学問は、従来の「ヨーロッパ中心の世界史観」の変更をせまる学問だったのかと、小生は結論づけます。