内容説明
本書は、地方に埋もれた厖大な裁判記録や住民の苦情の集成という一次資料を比較の視点により分析し、イスラーム理解の要諦であるイスラーム法(シャリーア)の歴史的実態を初めて明らかにした画期的労作である。
目次
第1章 ウェーバー理論の再検討と法人類学的アプローチ―十七、十八世紀におけるオスマン朝法過程の構造
第2章 法の歴史的展開―カーディーとシャリーア裁判所の位置
第3章 理論的法とその実践的過程―法的体系におけるフェトワー
第4章 慣習法とギルド
第5章 法と政治・社会の相関性―オスマン朝の政治体制における家産制と官僚制の点検
第6章 総括的批判と展望
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴィクトリー
1
タイトルには「イスラームの国家・社会・法」とあるが、内容はイスラーム一般での話では無く主に16~18世紀頃のオスマン帝国での話である(現代モロッコの事例との比較はあるが)。かつてのイスラム法欠陥説を批判してのこのタイトルなのかもしれないが、研究の進んだ今となっては時代遅れかもしれない。裁判記録や苦情集成などから得られた知見は興味深い。が、本文のせいか翻訳のせいか、文章の意味の流れの見通しが悪く、何を言いたいのか分かりにくい箇所がそこそこあった。この時代・地域の法の実施状況を知るには役立った。2012/02/02
抹茶ケーキ
0
イスラームについてのウェーバー法社会学を批判している。法についてはどちらかと言えば前半がメインで、後半はオスマン帝国についての(必ずしも法に関係するわけではない)記述が中心になっていた。イスラーム法はウェーバーの言うように硬直していたわけではなく、カーヌーンと折衷的に運用されていたということを判例を用いて論証するあたりは面白かった。ただ一地域の研究なので、それが全面的にウェーバーを反駁していることになるのかということについて疑問が残った。翻訳がちょっと固いかなとは感じた。2016/04/11