内容説明
あの冬、ドーセットの村で迎えた最後の聖夜。いま、幾歳をこえ、押し寄せてくる思い出は、雪のかなたのランタンの灯のように、黄金色にまたたいている…。「…ゆうべ、雪が降った。思い出が押し寄せてきた。忘れていたなにもかもが」少女だったファニーの、あの冬のクリスマス。枯れ草色のレディマンの丘につもった雪が、ランタンの灯をうつす。宝物のようにしまわれていた記憶の中の聖夜が歳月を越えてよみがえる。
著者等紹介
ヒル,スーザン[ヒル,スーザン][Hill,Susan]
1942年、英国ヨークシャーのスカーバラに生まれる。ロンドン大学在学中から小説を発表し、1971年、五作目のI’m the King of the Castle(邦題『ぼくはお城の王様だ』)でサマセット・モーム賞受賞。その後も、話題作を生み、数々の賞に輝く。小説のほか、脚本、批評、編集の分野でも広く活躍
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感想・レビュー
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mizuha
12
「ゆうべ雪が降った。と、思い出の波が寄せてきた」とはじまる物語。プロローグでもエピローグでも、何度も詠うように繰り返される。9才のファニーが過ごしたクリスマスの3日間は、多感な少女にとって、初めてだらけの特別なクリスマスだったのだろう。語られるのは3日間の出来事だけど、語られない長い年月さえも判らせてくれる。いつ読んでも深く心に残ると思うけれど、やっぱり寒さ厳しい頃がふさわしいかな。控えめながら、装丁も挿し絵もとても好い。2014/01/27
星落秋風五丈原
8
「ゆうべ、雪がふった。」 このフレーズは、プロローグで六度、エピローグで二度繰り返される。 「と、思い出の波が寄せてきた。」という言葉と対になって、あるいは単独で。 この物語の主人公ファニーが、雪と共に思い出すのは、 「Lanterns across the snow」-雪のかなたのランタン。 それは凍りつくような寒さの中で、家の中の家族を照らした本物のランタンであり、そして、暖かみのある所-家、更には家に集う人々の象徴でもある。平和の象徴-ランタンの元で繰り広げられたさまざまな事を描く。2005/05/17
yesod
5
雪が降ると、遠い昔、村で迎えた最後のクリスマスの想い出がよみがえる。あの日起きた命にまつわる大切な嬉しいことと、哀しいこと。そして特別なこと。クリスマスの時期にもう一度読んでみたいと思える美しい一片の絵のような作品です。2012/06/19
おーうち
4
詩のような文章の繰り返しで、数十年の昔のそれも貧しい田舎町の住民とのできごとを思い出していく。9歳の頃。クリスマスの雪の中のさみしい村はずれにある牧師家族。みんなもう残っていないのだそうだ。さみしい気持ちと豊かな時代。2019/05/04
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