内容説明
猫、猫、猫、猫、猫、猫、猫。どこを見ても猫ばかり。いつもの角を曲がったら、そこは夢現・無限のめまい町。ノスタルジックでモダーンなイラスト紀行。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
119
白昼夢の中を彷徨っているような感覚。突如世界が裏返しになって、いつもの散歩道は夢幻の風景に一変する。そして、目の前には猫猫猫猫猫猫猫猫。どこを見ても猫ばかり……。宮沢賢治にも影響を与えたという『日本近代詩の父』萩原朔太郎がただ一つ遺した小説。デカダンスな雰囲気に満ち、ノスタルジックで幻想的。不穏なトーンの金井田英津子さんの版画との組み合わせが唯一無二の世界を作っている。幻覚剤中毒だったという萩原氏の目には、世界はこのように映っていたのかもしれない。2016/01/20
(C17H26O4)
102
ページを閉じて何気なくそこに置いたこの本は、もうただの本には思えない。すごい存在感でそこにあり、別の世界に繋がる通路へのほの暗い入口となった。コンパスがぐるぐると廻り三半規管を狂わせ、メビウスの輪が空間を宇宙の反対側にある不思議の町に繋げてしまったら、次第に影は猫々黒々と。忍び寄る恐怖と不安の気配に鼓動が速まる。そしてああ!猫、猫、猫、猫、猫、猫、猫。ロックオンされた!猫が恐怖だ。これは…恐怖だ。どきどきが止まらない。めまいがするような迷子体験。2019/09/08
buchipanda3
87
萩原朔太郎氏の小説に金井田英津子さんの挿画を組み合わせた本。先に文章のみの本を読んで、そのあとにこちらを手に取った。あの世界観がどんな風に描かれているのだろうか。特にそれまでまだ冷静さを保っていた語り手が不意の出来事の後の沈黙した世界で咄嗟に連呼した場面。頁を捲って現れた光景に思わず驚嘆、感服、笑み。張り詰めた空気にひょいと出没した遊び心をしばらく眺めていた。他にも場面転換の妙味が幾つも感じられた。迷い子のざわめきからの無音、そして異国風な街並み。詩人の言葉に蠢く環境音が重なるかのような味わいを堪能した。2026/02/21
風眠
86
「今の自分が自分であるかと。この一つの古い謎は、千古に亘ってだれにも解けない。錯覚された宇宙は、狐に化かされた人が見るのか。理智の常識する目が見るのか。そもそも形而上の実在世界は、景色の裏側にあるのか表にあるのか。」/本文より。この文章に出会って以来、私は自分という存在、今見えているもの、そもそもが夢ではないのかと少し疑ってしまっている。この不思議なトリップ感、萩原朔太郎という詩人の言葉と、金井田英津子という画家が差し出して見せてくれた、非日常からストンと日常に還ってくる感覚。この本に出会えたことの幸せ。2014/09/07
めしいらず
82
いつもの通り慣れた道が、反対側からだと何だか違って見える。よく知ったはずの景色がガラリと変わったような感覚。それを薬物依存の歪なフィルターを介して見ると、怖くて目を塞ぎたいような、それでいて妙に惹きつけられ、こわごわ指の隙間から覗き見てしまうような、蠱惑の世界が立ち現れる。現から夢へ。夢から現へ。著者の筆に弄ばれる。私たちは本当に夢と現実をきちんと区別できているのか。あの乱歩の言葉、「うつし世は夢、夜の夢こそまこと」を思い起こす。そして足元が覚束ないままに置き去りにされ、物語は閉じられる。凄い。2014/07/04




