内容説明
京都金閣寺裏で11才の少女を殺害、逮捕されたのが吹上佐太郎であった。当時19才の犯人は二つの恩赦で無期の獄より出ると、関東各地で六連続少女殺人を犯していく…。それは明治から大正へ、苛酷な奉公制度の名残りのなか、極貧にあえいだ上での犯行だった。無学ながら獄中で尨大な著作を残したこの殺人犯の類型として小平義男、栗田源蔵、李珍宇、大久保清、永山、勝田らは位置するのだろうか。日本型連続殺人のメカニズムとは。
目次
第1章 大正時代の光と陰
第2章 獄中学問が問いかけるもの
第3章 六連続少女殺人
第5章 吹上佐太郎を死刑に処す
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
gtn
7
大正期の殺人鬼、吹上佐太郎。連続四人射殺事件の永山則夫と小松川事件の李珍宇に境遇が酷似する。皆、幼いころから極貧。獄中で初めて学に触れ、文筆をものにし、インテリの一部を味方とする。しかし、三人に共通するのは、社会に虐げられているという被害者意識である。一見文学っぽく見えるメッセージ発信も自己正当化に過ぎない。なお、本著は、おせんころがし殺人事件の栗田源蔵の懺悔録も掲載されており貴重。2019/02/24
たまうさ
0
セックスくらいしか楽しみのない貧困が性犯罪を生み出すという例の典型。頭も悪くなかった犯人が違う環境に生まれていたら、犯罪者にはならなかっただろう。カレンダーの自伝の前半だけ読んだ事があるが、とても『読ませる』筆力である。2014/02/23
綾紗
0
日本近代の性的連続殺人犯の元祖、吹上佐太郎の生涯を、大正と言う時代を掘り下げてその不幸な境遇を詳細にした一冊。永山則夫、李珍宇、勝田清孝、小平義雄、大久保清、栗田源蔵などの犯罪や資料と比較もあって、興味深く読めた。吹上佐太郎の論を全て肯定は出来ないが、無学や貧しさ等の環境が人の道を踏み外させる一因に成り得ると言うのには共感。最期に遺した訓戒は、全ての子の親の胸に刻んでもらいたいもの。しかし、獄中で死刑囚が遺す手記と言うのは、自己陶酔が過ぎて不快。あと、本書は校正が不十分だったのが気になった。2018/07/29