内容説明
吉野の国栖奏と淡路の枯野伝承は、山人と海人の生業の繁栄を呪祷する神事だった。これが天皇の統治儀礼に変容し、次いで古事記・日本書紀に歴史化されたこれら三つの相を明解に辿る。
目次
序章 山人と海人の伝承の生成(河内王朝の統治体制;国栖伝承;枯野伝承)
第1章 枯野伝承の生成―渡海安全・服属・治世(枯野伝承の構造;伊豆国軽野産の官船;古態を残す仁徳記;巨木伝承の展開;枯野琴の歌の呪祷性;「枯野」の名義の展開;淡路の海人の服属伝承;琴による天皇の統治;首都圏の治世謳歌;全国統治と国威発揚)
第2章 国栖伝承の生成―森の新生・服属・皇位継承(国栖伝承の構造;国栖奏;応神朝の山人;国栖奏の原形;国栖の服属と山人の統治;皇位継承;国栖の服属)
終章 祭祀・服属と統治・記紀の論理(山人と海人の伝承の生成)
著者等紹介
畠山篤[ハタケヤマアツシ]
1946年3月秋田県生まれ。國學院大学大学院文学研究科博士課程満期修了。現在、弘前学院大学大学院文学研究科教授。博士(民俗学)(國學院大学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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狐狸窟彦兵衛
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「応神」「仁徳」両朝の成り立ちを古事記を中心に収載されている歌謡からその権力の性格を読み解こうとしています。「難波高津宮」を営み、強力な海上機動力をもって、瀬戸内、東アジアと交流した政権を支えた支配構造の基盤を船を駆る「海」の政と、船の材料となる木を育む「山」の政の統合にあると見通している視点はなるほどと納得できます。古事記の歌を、周辺勢力の祭祀の歌謡と結び付けて読み解く論考を読みながら、古事記って、本来は読むためのものではなく、語り、歌うためのシナリオだったんだなぁという思いを新たにしました。2015/10/06