感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
まさあき
1
大東亜戦争の戦死者三百万人。フィリピンにて六十万人が死亡。本書は南方戦線を生き残った著者が記した戦争体験記である。 伍長として徴兵され、鼻高々に送り出された著者を待ち受けたのは、飢餓と疫病が蔓延した世界だった。「どう戦うか」ではなく「どう生きるか」。もはや戦いどころではなかった著者の頭には常に厭戦的な考えが逡巡していた。良い、悪いではなく、生というものに執着する生物的な弱さが垣間見える本書。敗兵として生を求めた歩みに、もはや道徳など存在しなかった。 戦後70年を超えたいま、一つの史実として手に取りたい。 2016/02/05




