感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chang_ume
3
「昭和10年京都大災害」は校舎建設や河川大規模改修(鴨川、天神川など)など、近代京都の一大画期でした。被害と復興について、詳細な事例を浮かび上がらせた筆致は迫力あるものです。被害の深度を、歴史的な古地形(扇状地など)×昭和初期の社会的条件(貧困率など)と見ると、水害後の改修事業が社会福祉政策とリンクした様もよく理解できます。地理学と課題解決がクロスする場面。同時に、皇室からの「御下賜金」が被災者支援に充てられた経緯は、天皇制が近代日本にとって非制度的な包摂を期待されたことを窺わせるものでした。2017/11/29