内容説明
悪意渦巻く海辺の町―トンプスン・ノワール、鮮烈な傑作。
著者等紹介
トンプスン,ジム[トンプスン,ジム] [Thompson,Jim]
1906年、アメリカ・オクラホマ州生まれ。油田労働者、ベルボーイなど、職業を転々とする。1942年、初の長篇を出版。1949年、初の犯罪小説『取るに足りない殺人』を発表する。1977年没
田村義進[タムラヨシノブ]
1950年、大阪生まれ。金沢大学法文学部中退。日本ユニ・エージェンシー翻訳ワークショップ講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
135
『ゲッタウェイ』『天国の南』に続き、トンプスン3作目。どれも作風が全く違うように思うが、唯一共通点として感じるのは、愛し合う者達への羨ましさ、 純粋に愛から求め合うことへの渇望。しかし、文体はかわいていて、素っ気ない。女に巣食う悪意。それを剥き出しにすれぱ、彼女に向ける感情はいずれ殺意とはなるまいか。しかし、殺意は羨ましさ、妬み、また離れたくないという愛情からも生まれる。殺意は少しずつ育まれていったのか、突発的に沸き起こったのか...。ただ働くラルフと、彼に仕事を与えたピートはいいな。おすすめの作品。2018/06/07
ふう
15
人口1280人(!)の海辺の町を舞台に、12人男女が語る”殺意”の物語。ミステリーとしてより、ジム・トンプソンを楽しめる一冊。登場人物がもう嬉しくなっちゃうくらい如何にもトンプソン的な人物で、誰もが満たされず、何かを欲してがんじがらめの人生を送っている。解説にもあったが「内なる殺人者」の「おれたちみんな」がここにもいるんだなーという感じ。あージム・トンプソンやっぱかっこいいわ(トンプスンでなくトンプソンのがしっくりくるのはなぜだw)2018/05/08
hikarunoir
14
11人の「信頼できない語り手」=「グリフターズ」豪華版、金目当てのケチな顛末は「失われた男」的虚無。この翻訳ラッシュ、三川さん意識してて嬉しい。2019/11/19
bapaksejahtera
12
開発から取り残されたNY郊外の小さな町で、おしゃべりなゴシップメーカーの老女が殺される。関係する10人ほどの人物が一人称で次々と登場し、それとともに事態が進行するストーリー。なかなかに斬新な様式である。殺される人間が誰であるかは読者には初めから判るのであるが、犯行は小説の終盤近くになってなされる。実のところ実行犯が誰であるかはかなり曖昧で、本作品の勘所は犯人当てでも謎解きでもない。其々に闇を抱えた人物が登場し、周囲の評価とは大いに異なる思考と行動様式を披露する。社会を支配する闇と暗鬱が主人公なのだ。2022/01/13
GO-FEET
11
いまのところこのジム・トンプスンのシリーズにハズレなし! 文遊社さん、引き続き頑張ってください。 ★★★★2018/06/18