内容説明
’20年代のテキサスの西端は、タフな世界だった―パイプライン工事に流れ込む放浪者、浮浪者、そして前科者…本邦初訳。
著者等紹介
トンプスン,ジム[トンプスン,ジム] [Thompson,Jim]
1906年アメリカ・オクラホマ州生まれ。油田労働者、ベルボーイなど、職業を転々とする。1942年、初の長篇を出版。1949年、初の犯罪小説『取るに足りない殺人』を発表。ペイパーバック・オリジナルで作品を次々に発表する。『現金に体を張れ』『突撃』(スタンリー・キューブリック監督作品)の脚本に参加。1977年没
小林宏明[コバヤシヒロアキ]
1946年東京都生まれ。明治大学英米文学科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
151
読んでいる間、心臓がドキドキしてページを捲る手が震えた。パイプライン工事現場、メキシコの国境からあまり離れていない場所、サソリや蛇のいる所、無垢で無謀なまだ少年のような若者、彼の周りに群がる危険、美しい少女、そして仕事を探す労働者、荒くれ者。彼らがいるのは一種の無法地帯。『ブラッド・メリディアン』と『怒りの葡萄』を読んだ時と同じような焦燥感にかられた。書かれたのは1960年代だが舞台は1920年代。先月読んだ同作家の『ゲッタウェイ』よりずっといい作品だと思った。本当にいい意味で裏切られた。2017/10/21
藤月はな(灯れ松明の火)
88
学があるもダイナマイトで祖父母が吹っ飛び、今は各地を流れては職にありつく生活を送るトミー。石油を通すパイプラインの仕事に就いた彼は知り合いと運命の女性に出会うが・・・。大人びようとしているトミーだが全てにフラットな見方をするフォア・トレイさえも気にかけずにいられない程の純情な男の子だ。そんな彼とキャロルの遣り取りが微笑ましくも切なかった分、後の展開は意表を突かれた。しかも主人公の影が薄くなってきている!しかし、この物語はトミーの青春物語に着地している。ダイナマイトを恐れていた子が・・・。幸せになっておくれ2019/07/13
harass
83
この作家の初訳がいまさらでたことに驚いていて、図書館に入って来たので借りる。ほぼ前知識無しで読み出す。20年代米でのパイプライン敷設の仕事をする、あぶれ者や季節労働者に混じる、若い主人公とギャンブラー。実に雰囲気がよい。主人公の若さと無謀さがこの作家の登場人物らしからぬ感性があり少し驚く。いつものこの作家のであれば海千山千の食えない人物であるのだが。どちらかというと青春小説に近く、みずみずしさを感じる。ラストは実に映画的。おすすめ。2018/01/17
Shintaro
71
ジョー・ネスボと読友のnaoさんが推してた初読みのジム・トンプスンは良かった。パルプ・ノワールに敬意を表しているのか、ペーパーバックのようなザラ紙に印刷してある。文遊社やるな。1920年代、テキサスで油田や天然ガスが掘られ、メキシコ湾までパイプラインを通す工事があった。ムショ帰りやホーボー、ならず者が群がってくる。主人公トミーも危険なダイナマイト、削岩機、高温のコールタールみたいなのを扱ううちに、そこに渦巻く欲望、陰謀、人生の真実に気づいてゆく。ラストは爽快だった。機会があればトンプスンもっと読みたい。2018/03/17
hit4papa
61
1920年代 テキサスの石油パイプライン敷設工事現場を舞台に、渡り労働者の青年の日々を描いた作品です。著者の作品の主役は、悪党か、さもなくば悪党に翻弄される者に概ね分かれます。本作品の主役トミーは、そのどちらでもなく、多少の正義感を持ち合わせた純粋な青年です。本作品の注目すべきは、浮浪者、放浪者、前科者が集い、何があってもおかしくない危険な現場感覚でしょう。著者自身の油田での労働経験に負うところが大きいようです。ラストは痛快ではあるのですよ。しかし、細かなところで辻褄合わなかったりで、スッキリしません。2019/08/22