内容説明
サンフランシスコ郊外、周囲と隔絶した住宅地は悪意を静かに胚胎する―。
著者等紹介
ジャクスン,シャーリイ[ジャクスン,シャーリイ] [Jackson,Shirley]
1916年、アメリカ・サンフランシスコ生まれ。シラキュース大学卒業。1940年、評論家のスタンリー・エドガー・ハイマンと結婚。1948年、『ニューヨーカー』誌に発表した傑作短篇「くじ」がセンセーショナルな反響を呼ぶ。著書に『日時計』(1958)、『丘の屋敷』(1959)、『ずっとお城で暮らしてる』(1962)など。1965年没
渡辺庸子[ワタナベヨウコ]
1965年、東京都生まれ。法政大学文学部日本文学科(通信課程)卒業。訳書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
61
ペッパー通りの裏側がやがて人口減少で寂れる郊外の典型になっている。それが郊外に募る息苦しさとその吐口が如何に酷い目に合わされるのかを暗示する。女子同士のヒエラルキーの流転が女子のリーダーが悉く、意地悪になるから始まるのなんて良くある事。べバリーを蔑むのに同族嫌悪めいたものを感じるからこそ、彼女の母の仕事は水商売という思い込みは都合のいい理由だったのだろう。ハリエットの嘘は自分の後ろめたさを隠し、相手へ責任を転嫁する為というあり得る嘘なのもパットの被害者家族という立場に酔う様も醜悪でどこにでも転がっている。2022/04/24
ゆかーん
35
ペッパー通りの閉鎖された環境では、家々の付き合いがすごく大切。大人も子供もそれぞれがお互いの顔色を伺いながら生活している。一見仲良く見えていても、そこには壁が存在していて、自分より上か下かを区別している。この時代の人々には当たり前のことかもしれないが、今の時代ではそれらは全て差別的発言になることばかり…。人を貶め蔑み妬むギスギスした人間関係が潜んでいるところが、シャーリーの描く人間模様の醍醐味。最後に起こる不可解な事件がターニングポイントとなり、ペッパー通りの人間関係は崩壊します。後味最悪な読書でした。2022/12/17
星落秋風五丈原
35
日常淡々を重ねながらやがて一つの事件に続く道だった。2022/02/10
ROOM 237
20
登場人物約40人の長編群像劇。冒頭に彼らの家族構成と家の敷地図を掲載するという、読書というより知力試されてるのでは?とメモをとりながら読み進める。どこにでもある住宅地のご近所同士の会話の端々から人種差別に皮肉に嫌味が散らばるが、表面上では織り目正しくしなければとお互いを牽制し合う人々。悪意に怯える者が心を剥き出しにする瞬間や、強引な人物描写が実にジャクスンさんらしい描き方だし、心理的影響を反映した詳密なインテリア描写が素晴らしく何度か読み返したりも。ラストのミステリタッチな急展開の真相が知りたい!2022/01/10
くさてる
18
新年最初の感想はこれ。1940年前後の西海岸の住宅地を舞台に繰り広げられる人間模様は、ごく普通のひとびとのよくあるやりとりのはずなのに、ところどころに不穏な雰囲気が漂う、緊張感のあるものになっている。人間同士の不和、差別、悪意、そんなものが結晶した物語が、一つの大きな事件にたどりつくものの……という展開には、派手さこそないが、やはりジャクスン以外には書けない物語だと感じた。2022/01/02
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