内容説明
わたしはここよ―謎めいた少女に導かれて乗る最終バス、彷徨い歩く暗い道。
著者等紹介
ジャクスン,シャーリイ[ジャクスン,シャーリイ] [Jackson,Shirley]
1916年、アメリカ・サンフランシスコ生まれ。シラキュース大学卒業。1940年、評論家のスタンリー・エドガー・ハイマンと結婚。1965年没
佐々田雅子[ササダマサコ]
1947年生まれ。立教大学英米文学科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆかーん
63
妄想癖…。彼女の頭の中は一体どこまでお花畑なのでしょう…。小説家の父のせいで、周りから作家になることを期待され、ギスギスした生活を送る少女。そのせいで、空想上に謎の刑事を登場させ、何もない空間に向かって、勝手に自問自答する姿はホラーそのものです…。大学生活でも、個性的なクラスメイトや先生のせいで、ますます悲観的になってしまう少女…。最終的に、彼女はトニーと共に、出口のない世界へと誘われるのでしょうか。なかなか入り込みにくい文章でしたが、シャリーの心の闇をそのまま表現したような、独特な世界観を堪能しました。2017/04/09
星落秋風五丈原
41
ヒラリー・ウォーの『失踪当時の服装は』のモチーフになった事件にインスパイアされた作品。居場所をうまく見つけられない女子大生ナタリー。ト二―はナタリーの作り出した幻影。10代の頃、どうして自分は回りとうまくいかないのだろう?と一度でも悩んだことのある人には覚えがあり過ぎて「うわぁぁ」となってしまう。2016/09/19
ノコギリマン
32
シャーリイ・ジャクスン。 初期の長篇ということで、まだまだ「こちら側」にいる物語なんだけど、その後の物語につづく不穏な雰囲気はすでに感じられる。っていうか、もうシャーリイ・ジャクスンってだけでなんでもいいんだけどな笑2016/10/13
くさてる
31
さまよっている。どこにもたどりつかずに、ただよっている。見える世界のすべてが膜につつまれたように曖昧なのに、苦しさや悲しみ、孤独や怒りだけは生々しい。ここで描かれているのは少女のさまよいだけれども、怖ろしいことにジャクスンの世界では、大人の女性も、若妻も、中年女も、老女も、みなどこかにさまよってしまう。ふと足を踏み外して日常でない世界に足を踏み入れて、誰もそこから抜け出せない。もしかして、それが女性であるということなら、こんなに悲しく怖いことはないのだけれど。2016/12/17
jamko
15
現実のきわきわのところを必死でよたよたと歩いてる。だけど気付けば現実は悪意を持ってナタリーもわたしもはじき飛ばしていた。戻れる気がしない。戻ったとしても、という絶望。シャーリー・ジャクスンは10年くらい前に読んだ『くじ』という短編集以来なのだけど、邦訳されてるものは全部読みたいと思った。あと訳者あとがきにヒラリー・ウォー『失踪当時の服装は』との関連が出てきて驚いた。好きなミステリなので。そっちも改めて読み返したい。2017/01/13