内容説明
シャルル・ヴィルドラック、アンリ・プーライユが絶賛したオランダ出身の女性フランス語作家が描く、ゴンクール賞候補となった驚愕の自伝的小説。一世紀を経て、三部作すべてがついに本邦初訳!
著者等紹介
ドフ,ネール[ドフ,ネール] [Doff,Neel]
1858‐1942。オランダ出身の女性フランス語作家。50代に自伝的三部作、『飢えと窮乏の日々』(1911年)、『ケーチェ』(1919年)、『使い走りのケーチェ』(1921年)を著した
田中良知[タナカヨシトモ]
1947年、盛岡市生まれ。東京都立大学大学院修士課程修了。19・20世紀フランス文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
今野ぽた
3
タイトルの通り作者の「飢えと窮乏の日々」を過ごした自伝的小説であるが、これは単なる貧困小説ではなく一人の人間の「移動」の記録であると言えるだろう。主人公のケーチェは様々な街、国を移動するが、その移動と貧困は不可分な位置にある。しかし貧困は移動の本質ではない。やむを得ない事情から「移動」を強いられたケーチェはやがて貧困から脱し、自らの意思で「移動」を始めるようになる。もちろん貧困は一つの大きなテーマに間違いないが、こうした一人の人間の「移動」の微細な差異がこの作品の文学的な価値を高めているのだと思う。2016/03/23
q0j0p
0
飢えに無頓着で脱する努力をしない家庭に生きるケーチェ 1章は リズミカルに読める幼少時代の記憶 2章は家を出て恋愛を重ね ようやくそれなりの生活を手に入れる記憶。 3章は何だろう 恐らくこれはケーチェが思い描く理想の生活 与えられなかった笑顔のある生活 読むうちにそう思えて来る そして 衝撃の結末 惨いなと思う。 起承転結 感動の涙 綺麗なエンディングを求める日本の小説とは明らかに違う ある意味心に残る小説。 2017/09/15
りゃーん
0
ネール・ドフ「飢えと窮乏の日々」読了。元娼婦の書いた長編三部作で興味を持ったが、日本のプロレタリア文学はいくつか読んだが、フランスのはなく、初めて聴いたので読んだがあたかも子ども名作劇場だ。「母をたずねて三千里」のペッピーノ一座の綺麗な踊子の副業や「ロミオの青い空」の黒い兄弟が活躍している時に姉妹は何をしていたのかと問えばこういうことだったんだよ。プロレタリア・貧困・売春だから抵抗があろうが、コレ、高畑勲がアニメにしそうな話なんだよ。第二部「ケーチェ」は真っ当な近代文学で批評性と物語の兼ね合いが巧み。2017/07/29