内容説明
1970年代以降の日本映画を代表する映画監督が、伝説の脚本家集団「具流八郎」、日活ロマンポルノ、そして突然の失踪、発明家の現在までを明かす―奇才の全人生/全映画。
目次
第1章 河岸段丘と坂と(河岸段丘と坂と;混雑する田舎 ほか)
第2章 万年フォース助監督(補欠;監督椅子 ほか)
第3章 人間半(ロマンポルノ時代劇(71~72)
猥褻を撮る(72~76) ほか)
第4章 灰が磁石にくっ付いた(いまだ果されない湯布院の約束;奇蹟 ほか)
著者等紹介
曽根中生[ソネチュウセイ]
1937年、群馬県生まれ。1962年、東北大学文学部美学美術史学科卒業、日活に入社。鈴木清順らの助監督につく。その傍ら、脚本を担当した『壁の中の秘事』(若松孝二、1965)がベルリン国際映画祭に出品される。また、脚本家集団「具流八郎」として大和屋竺、田中陽造らとともに活動、鈴木清順監督の『殺しの烙印』(1967)の脚本を手掛ける。1971年、『色暦女浮世絵師』で初監督、日活ロマンポルノを代表する監督として活躍。一般映画では、『嗚呼!!花の応援団』(1976)が大ヒットする(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
46
この本を知ったのは、白鳥あかねさんの『スクリプターはストリッパーではありません』(図書刊行会)がきっかけだった。日活ロマンポルノ=曽根中生が、僕の中ではかなりインプットされている。あの大量の作品群が、田舎町の映画館に貼られていたポスターに重なる。「曽根さんにとって映画とは何か?」と問うと、「私にとって、映画は職業でした。芸術でもなければ、何でもないんです」と答える曽根さん、潔いくらいに、忽然と映画界から消えた。そして、曽根中生監督の名を1冊の本として残して逝った。最後に「魂の映画」を撮って欲しかった。2015/03/05
きいち
19
映画ってこうだなあ、と感じさせる本。集団でモノ作るのって他にもあるのに、映画だけが違う扱いをされるその「何か」がある。◇ボディである全作品インタビューがすごい。見てないのに、ちゃんと楽しませてくれる。俳優脚本制作に撮影照明編集…一人ひとりの仕事ぶりと人間関係、曽根の口の悪さのお蔭もある。◇そして、「失踪」した後の大分臼杵編がまた面白い。魚の養殖だの機械の開発だの、ビジネスの進め方も映画の作り方と全くおんなじなのだもの。人をつなげて特許とって震災復興に役立つような機械まで作って…。生ききったのだなあ、合掌。2015/02/22
garth
17
とんでもなく面白い。ものすごく怜悧な人である。「自分よりも、見て劣る人間に賞をやるんですね。だから、賞をもらって喜ぶのは下の下です。大概そうじゃないですか、なんとか賞なんて、下らないのがもらっているでしょう」2014/09/11
tsukamg
2
自伝ではなく、作品インタビュー中心の本だと最初は思った。自虐をベースにしたニヒリズム発言は不愉快で、読んでいるとなにかの残骸を見ているような気分になった。しかし残骸の中に、キラキラしたものがあちこちに散らばっていた。組み立て方さえ間違えなければ素晴らしいものになったかもしれないと思った。インタビューは80年代後半になると尻すぼみに終わる。その先を再び『自伝』が埋める。この後半生が、キラキラの落とし所だった。だからこうして『自伝』を書ける自分になれたのだ。上出来なゴールだと思う。2023/10/11
RHINO
2
映画と同じくアンバランスな本。それがいい。ただ、語られている映画を観たくならないのは困りものかも…2015/01/28