内容説明
水平線に沈む夕陽が最後に放つ、翡翠のような光を探して、島から島へ―ヴェルヌ、異色の恋物語。幻の初期短編『メキシコの悲劇』併録。オリジナル挿画50点収録。
著者等紹介
ヴェルヌ,ジュール[ヴェルヌ,ジュール] [Verne,Jules]
1828年、フランス・ナントに生まれる。法律の勉強のためパリに下宿している頃、アレクサンドル・デュマ父子と出会い、劇作家を志す。1851年、「家庭博物館」誌に短篇「メキシコの悲劇」を発表し、小説の執筆に取り組む。1863年に刊行した冒険小説『気球に乗って五週間』が大評判となり流行作家となる。科学冒険小説の傑作を生涯に渡って発表。H・G=ウェルズに並ぶSFの始祖として知られる。1905年没
中村三郎[ナカムラサブロウ]
1929年、山梨県生まれ。早稲田大学文学部卒業。早稲田大学名誉教授
小高美保[オダカミホ]
明治学院大学仏文学科卒業。アテネフランセにてディプローム取得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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怠
5
SF作品だと思っていたら、恋愛もの。意外でした。こういう作品も書いていたのですね。でも流石は天才ジュール・ヴェルヌ。「海の波動におよぼす魚の尾ひれの影響はいかに?...」は、もうカオス理論でしょ。舞台がフランスじゃなくてスコットランドなのも驚いた。荒れ狂う海や、石柱、さまざまな海鳥などの描写は本当に良く現地を取材したのだなと関心させられた。2編目のメキシコを舞台とした作品は24歳のときのものと知り、さらにびっくり。当時情報が限られていた時代にこれだけの取材をしたのだから、やはり大したものです。2014/10/16
Junya Akiba
4
ミスキャンベルに振り回されるサムとシブの伯父様兄弟たちが滑稽で愉快。1ページ目の二人の掛け合いは、野ねずみのぐりとぐらを思い出しました。さて、物語は「緑の光線」という題名からSFを想像しましたが、珍しく女性を中心に進む恋愛物。作者による細かなスコットランドの描写に思わず私も「緑の光線」を探す旅に出たくなりました。2015/12/23
h
4
『人の心の喜びや悲しみを説明しようとするな』というキャンベルのセリフ通り、ただ文章を感じていればよい贅沢が許されているのは読者だけであって、ヴェルヌは作家である以上、感動を与えるために説明(描写)をしなければならない。人の心の喜びや悲しみを説明したがるのは野暮だと思うが、その仕組みを探ろうとすることを喜びに感じるのもまた自分である、と私小説的に動かしてみたキャラクターがアリストビューラス・ウルシクロスなんではないか、と感じた。日没の描写は、太陽が海に浸かって液体が変色していくかのように書いており美しい。2014/08/02
筋書屋虫六
3
期待を膨らませて読み始めたわりに、けっこう手こずってしまいました。実はヴェルヌ初読みです。裕福な育ちのミス・キャンベルの夢見がちの奔放さ。それに振り回される二人の叔父メルヴィル兄弟のコント。勇敢な青年オリヴァー・シンクレアとの恋。…しかし道化役(適役?)ウルシクロス氏の困難なキャラクターがいちばん面白かった。「緑の光線」を見るための冒険なのに、焦らして焦らして最後は▲○♤*▽※●☆□ですか〜〜c(>ω<)ゞ それにしても、この物語から映画『緑の光線』を作り出したエリック・ロメールはやっぱり天才ですね。2016/11/06
マコッサ
2
もちろんのこと大好きなロメールの同名映画からここに辿り着いたわけだけれど、物語の流れは違えど骨格は同じの、流麗な文体(訳文)に見事に酔わせてもくれるし結末にハッとさせてもくれる恋愛物語の逸品。こんなにもあっというまに読了しちゃった読書も久しぶり。2018/04/17
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