内容説明
亡命ロシア人、プニン教授の数奇な生涯。
著者等紹介
ナボコフ,ウラジーミル[ナボコフ,ウラジーミル][Nabokov,Vladimir]
1899年、ペテルブルグの貴族の家に生まれる。ロシア革命後、一家で祖国を離れねばならなくなり、1919年、ロンドンに辿り着いた。ケンブリッジ大学で学んだのち、ベルリンで本格的な作家活動を開始するが、ナチス・ドイツから逃れるため1940年、妻子をともなってアメリカに移住。渡米後は、英語で執筆を始め、1955年『ロリータ』を発刊。精緻な仕掛けに満ちた小説を書く、多言語の亡命作家として知られるようになる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まふ
121
著者の自伝的人物像の物語。ロシア革命を逃れてパリから米国に亡命し、そのまま市民権を得たプニン。文学論を戦わせると誰にも負けない博識でインスピレーション豊かな男だが、日常の行動、所作が滑稽であり、マンガ的ともいえるそのキャラクターが多くの人々に愛される。大学のロシア文学・ロシア語の教員として何とか食いつないでいるが教員枠の問題で職場が無くなる…。続きは?と気になる。無駄のない簡潔な文章でナボコフの人物創造力が遺憾なく発揮された傑作だ。いやぁオモシロかった。 G574/1000。2024/07/25
ケイ
89
不器用で少し不幸なブニン。プニンの経歴からナボコフ自身の話のようにも思えるが、彼ならこれほど不器用であったはずがない。しかし、これはナボコフであり、手練た作者の手により、読者は完全にプニンに手を触れることはかなわない。革命により、他国を転々とした彼は、自らをこれほど不器用に感じていたのだろうか。終盤の恋文の心をうつ内容は、どの小説に書かれてきたものをも上回る美しい愛の吐露だと思った。トルストイの著書に関するところなど、「ナボコフの文学講座」を思い出させる緻密さで語られていた2015/08/01
NAO
79
1898年にペテルブルグに生まれ、ヨーロッパをさすらった後、祖国を追われた亡命ロシア人としてアメリカに帰化し、大学でロシア文学を教えているプニン教授。彼の現状と同時に、アメリカに帰化するまでの悲喜こもごもが描かれていく。プニンは、周囲の人々の笑いものになっているが、決して自分を曲げようとはしない。自分らしさをどこまでも貫く。だが、その姿は愚かというよりはどこか憎めず、むしろ懐かしさを感じてしまう。こんなちょっと変わった頑固爺さんっていたよなあ、と。もちろん、このプニンは、ナボコフ自身の分身である2021/06/11
Tonex
40
ナボコフが大ヒット作『ロリータ』の次に書いた長編。タイトルの「プニン」は主人公の名前。亡命ロシア人プニン教授の滑稽で悲哀に満ちたアメリカ生活を描く。『ロリータ』と比べるとかなり地味な話だが、わかりやすくて面白い。ナボコフらしい仕掛けも随所に埋め込まれていて、ナボコフ入門に最適。▼プニン教授はナボコフお気に入りのキャラだったようで、当初の計画ではラストで死ぬ予定だったが、結局殺さなかったばかりか、なんと次作『青白い炎』にカメオ出演する。▼ナボコフなのに読みやすすぎる。意訳・省略を行うタイプの翻訳と思われる。2016/06/05
syota
36
【第109回ガーディアン必読小説1000冊チャレンジ】参加。ロシア革命で国を追われ欧州を転々とした後、米国の大学に職を得たプニン教授。不器用で朴訥、融通が利かない彼は、不得意な英語をなんとか操り、小さな失敗を繰り返しながらも異国で精一杯生きている。プニンを表面的にしか知らない同僚たちは彼を物笑いの種にするが、その人柄を知る少数の人たちは、彼を愛すべき存在として受け入れている。→2024/06/22