感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
173
散歩をすればきっとすっきりするわ。細やかな少女セルスティーヌ。言葉にならない気持ちが心につっかえてしまったアーネスト。ほらずっと向こうに見えるだろう。ぼくはずっと考えていた。泣きたくなったときは花をつんだり歌をうたったりすればいいの。二人にとって大切なガズーへの思い。庭に咲く秋桜、全部つんで。早く。考えたくないのに考えてしまうこの気持ちから目をそらしたいのに。優しくやわらかなデッサンに悲しみが増していく。北国の秋は短いけれど、お互いの温もりが戻りはじめた頃にはまた秋桜が咲き、あの歌声が聴こえてくるだろう。2022/09/11
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
124
私たちは決して忘れないだろう。親友を見舞うため歩いたあの道を。陽射しの強さを。庭に咲くコスモスを届けた時彼女がみせた笑顔を。『あの夏』を―――。くまのアーネストとねずみのセレスティーヌの親友カズーは、病気で入退院を繰り返していた。カズーに会えるのが嬉しいセレスティーヌと対照的に、彼女の病気が治らない事を知っているアーネストの表情は苦しげだ。疲れさせてはいけない。病状をセレスティーヌに悟られてはならない。会うのが辛い……。自縄自縛に陥って揺らぐ心。そして……。いま、この瞬間をあなたと共に過ごせる事が嬉しい。2016/03/01
kanegon69@凍結中
79
アーネストとセレスティーヌのひと夏の話をバンサンの見事なデッサンで切なく綴っています。大切な人を亡くすという大きな喪失を経験する二人。何故会いに行けないのか、セレスティーヌが必死でアーネストにすがる姿がたまりません。二人の表情、しぐさ、散歩する姿、特に池のシーンがとても印象に残りました。とても切なく優しい話ですが、アーネストとセレスティーヌの心の動き、心象風景がバンサンの上質なデッサンにより一層引き立っています。大人の方がこの絵本の良さを体感できるかもしれないですね。日常に疲れた人にお薦めしたい一作です。2019/12/26
chimako
75
悲しみがじわじわとしみてくる。とても大切に思っていた人を亡くして、その人を偲びながら努めて明るく過ごす2人に涙腺がゆるむ。命の終わりを悟らせないためのウソはときとして残酷。けれどきっとわかってしまう。大切な人だから、その心遣いが伝わっていく。スーザン•バーレイの『わすれられないおくりもの』と似た読後感。残された者たちがどうか心安らかに楽しい毎日を送ってくれるようにと願うのは誰も同じ。セレスティーヌからのつながりで。2015/09/30
クリママ
48
セピア色で描かれたたくさんのデッサンと添えられた短い会話。いつも変わらぬ大きなアーネストの包み込むような優しさと小さいセレスティーヌの無邪気な愛くるしさがうれしい。大切な人を失う悲しみ。悲しみは消えることはないけれど、胸の奥にしまわれ、楽しかった思い出を振り返ることができるようになる。あの夏とともに生きていくことは、誰の上にもあることだと思った。2021/08/18
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