内容説明
掌に載る大きさの金属の箱、つい覗き込んでみるとそこには驚異の部屋が―25のスコープをめぐる幻想旅行譚!ファン待望の復刊!
著者等紹介
巖谷國士[イワヤクニオ]
1943年東京都生まれ。東京大学仏文科卒、同大学院修了。学生時代に瀧口修造や澁澤龍彦と出会い、シュルレアリスムの研究と実践を開始。仏文学者・評論家・紀行作家・明治学院大学名誉教授だが、写真、講演、展覧会監修などの活動も
桑原弘明[クワバラヒロアキ]
1957年土浦市生まれ。多摩美術大学油画科卒。80年代から極小のオブジェ作品をつくり、やがて「スコープ」のアートを創始。個展・グループ展多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
吉田あや
47
外も内も精巧な桑原さんのスコープ作品を、巌谷さんの美しい導きで巡る愉楽の旅。小さな箱に内包された丸い世界は空間を自在に広げ、伸ばし、部屋の表情や季節をも変えていく。四角い視覚の世界で小さな存在となった自分を体感するワンダーランドは、未視と既視が渾然一体となった小さな宇宙のように不思議で、覗く度に幾通りもの時間が流れ、物語は勝手に動き出す。窓から見える広大な外界は箱の中に広がる無限を思わせるが、窓の内にも外にも人間は存在せず、(⇒)2023/11/15
あき
22
★★★★☆ スコープのレンズを覗いた先に広がる世界。誰もいない昼下がりの部屋、蝋燭の灯る夜の部屋、ベッドのヴェールに影がゆらめく部屋…スコープを覗くたびに様々な箱庭にトリップするようです。光の入れ方によって影が出現したり、昼から夜になったりと雰囲気がガラッと変わります。小さな箱におさまった世界なのに奥行きが感じられ、窓の外には別の世界が広がっているようです。やわらかな光に照らされ、閉鎖的なのにどこかに繋がっているような、物語を感じさせる素晴らしい作品でした。2017/08/30
柊渚
20
手のひらにのるくらいの小さな箱。 そっとスコープ越しに覗いてみると、そこに広がっているのは小さな別世界。アリスの部屋。セロ弾きのゴーシュの部屋。ナルニア国へ繋がっていく扉。何度も何度も夢想した物語上の世界が目の前にあって、胸がきゅっとなりました。 桑原弘明さんが創りあげる美しい小世界に、巌谷國士さんの精緻な文章…まるで夢のような本。フェルメールの部屋や、『微かな記憶』『月の光』『雨音』の箱は、ずっと眺めていられる。装丁も手のひらにおさまる小ささで、とっても素敵です💫2021/08/07
さく
18
桑原弘明さんの「スコープ」という作品を写真に撮って文章をつけた作品集。手のひらサイズの小さな箱に筒状の覗き穴がついていて、そこを覗くと、不思議な世界が広がる。ライトを照らすことで、その世界が二転三転する。これは、本物を見たいなぁ。2018/03/12
YO)))
6
スコープとは『ジャメ・ヴュ(未視)とデジャ・ヴュ(既視)とがひとつのものになる小さな宇宙』。一辺10cmほどの直方体から筒が伸びており、その先のレンズを覗くと、ミニチュアの部屋が眺められる。特筆すべきは幾つかある採光穴に当てる光の加減によって、光景が-例えば昼から夜へと-実に美事に一変すること。不思議のひと、巖谷國士が部屋々々を旅して綴った"紀行文"も味わい深い。2015/11/15