内容説明
霊魂による肉体の統御が、宇宙の整合性とのアナロジーとして想定されていた2世紀のギリシア・ローマにあってガレノスは、霊魂の諸能力から、生命現象を発現させる生命力を、自然力と呼んだ。解剖と生理実験と臨床観察を通して、身体各部に内在する自然力が、健康と病気に直接関係あるとする、現代の医学思想にも通じる、実証精神と思索に充ちたガレノスの医学思想の本質を探る。『ガレノス・霊魂の解剖学』の姉妹編。初めて古代インド医学思想との関係を論じる。
目次
序説 生命力の思想
第1部 最良の医者(学問の花開いたアレクサンドリアとペルガモン;ハドリアヌス治世下のローマ;ペルガモンのサテュルスの下で医学修行;アレクサンドリアで諸学派を学ぶ;父ニコンの薫陶 ほか)
第2部 自然生命力(「全訳」自然の諸力(自然生命力)について
ガレノスの『自然生命力について』
ソフィストの前で
論敵の系譜
『自然生命力について』の構成 ほか)
感想・レビュー
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ヴィクトリー
1
ガレノスの「自然の諸力について」と「最良の医者を見分ける審査について」の全訳(合せて150Pほど)を含み、他は解説。と言ってもガレノスの引用を基にした、当時の他学説との論争についてのものがほとんど。現代医学との違いであるとか、ガレノスの限界、後世への影響、等については本書ではあまり扱わないのは少し残念か。また、本書の最初と最後に古代インド医学との類似点が述べられているが、紙幅も少ないので実際どうなのかは判断しづらい。参考文献は載ってるので、いつかはそちらも当たってみるかも知れない。2014/08/27