内容説明
時は平安の頃。ひとりの若い絵師が美しくも哀しげな若い人妻と出会った。男は女の風情に魅かれて絵筆をとる。老夫との佗しい日々に、人妻は蛇の如く男の前で身もだえして、燃えた―情念の作家が直木賞に挑んだ「蛇淫」。大坂城の妖しげな男と女。驚くべき徳川のスパイ。腐敗の中で自ら崩れていく戦国の時代を注目の異色女流時代小説家が、鋭くえぐる女の業と情念。「淀君妖しの舞」、など四篇を束ねた、珠玉の傑作集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
のびすけ
25
収録の1編「梅本屋放火事件」がお目当てで入手。江戸末期、吉原の梅本屋で起きた放火事件。予想に反し、放火を犯した遊女側の物語ではなく、折檻責めで遊女を殺害した主人側の物語だった。遊女たちを苦しめた主人とお禄の所業に身の毛がよだつ。表題作「淀君妖しの舞」は、秀吉の側室の淀君が大坂の陣で自害するまでを描いた物語。淀君の胸の内を興味深く読んだ。他の2編「蛇淫」「闇の裁き」も、残酷な結末が印象的で面白かった。男女のドロドロと残酷描写が特徴的な作者さん。出版されている作品はこの一冊だけのよう。2022/11/16