内容説明
記憶の深淵からとめどなく湧きあがる、少年時代の思い出。めくるめく幻想が紡ぎあげる、世界の涯のオリンピック国家、W。おぼろげな記憶の隘路を彷徨ううちに、不可思議な教練機構が精緻に構築されていく。二つの断片的テクストが交差する先に横たわる惨劇とは…?
著者等紹介
ペレック,ジョルジュ[ペレック,ジョルジュ] [Perec,Georges]
1936年、パリ生まれ。1982年、同地に没した。小説家。1966年にレーモン・クノー率いる実験文学集団「ウリポ」に加わり、言語遊戯的作品の制作を行う
酒詰治男[サカズメハルオ]
1944年、東京生まれ。甲南女子大学文学部名誉教授。専攻、フランス文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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兎乃
32
第二部のみ再読。南極大陸近くにあるWという孤絶した島国。島のトップであるウィルソンは“オリンピック”の企画に心酔し、物語はスポーツの地位と運営手段 その長い描写、次第にディストピアの影に包まれる。ペレックは1936年に生まれのユダヤ人で、同年ベルリンOPが開催された。ヒトラーは“健康”と“古代ギリシャの後継者”である事に強烈な拘りがあり、心身に障碍のある者、ナチのイデオロギーにおいて“活躍できない者”を安楽死させていく。ベルリンOPはユダヤ人大量虐殺への予行演習であり、→2015/09/25
内島菫
18
第一部では、著者の両親のわずかな思い出と消息が、海難事故で消えた子供を捜す虚構の物語と交錯する。父親は著者が四歳のときに戦争で、母親は六歳のときに強制収容所で亡くなっている。著者は両親の痕跡を書き残す。逆に虚構の物語のほうでは、子供が何の痕跡も残さずに消える。が、その子供の名前を自分の偽名として引き継いだ男は、第二部で子供が消息を絶ったWという村へ向かう。Wは架空世界でのアウシュビッツであり、杳として知れない母親の痕跡を埋めるように詳細なデストピアの構造が描かれるが、交錯する著者の思い出は断片的である。2016/05/27
monado
2
記号の偏愛から美しい構造を作り上げるのがペレックだが、その実、物語のテーマは構造が表さない陰画であり、最後にそれが浮かび上がってくる。 ペレックはもともとペレッツでありヘブライ語で穴を意味する、という言及も深遠だ。2014/02/20
Mark.jr
1
著者の自伝的物語とスポーツが生活の中心となっている奇妙な島の話。この二つが絡まるというより、歪んだ鏡像のようなコントラストをなしている独特の作品です。2020/04/10
ヘンリー八世が馬上試合で死んだことは内緒
0
オリンピック最強!新ジャンル:スポーツディストピア(それほど新しくもない2015/01/07
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