内容説明
詩を使って身体を解剖し、機能を開拓する―20世紀最大の詩人ポール・ヴァレリーが夢見た「純粋性」とは何だったのか。『カイエ』等の膨大な断片から、作品論、時間論、身体論を再構成する作業を通じて、その謎に迫る。気鋭の研究者による画期的なヴァレリー論。
目次
創造後の創造
1 作品(装置としての作品;装置を作る)
2 時間(形式としての「現在」;抵抗としての「持続」―注意をめぐって;行為の法則化―リズムをめぐって)
3 身体(“主観的”な感覚;生理学)
著者等紹介
伊藤亜紗[イトウアサ]
1979年、東京都に生まれる。東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究美学芸術学専門分野博士課程単位取得退学。博士(文学)。専門は美学、現代アート。現在、東京工業大学リベラルアーツセンター准教授、同大学大学院社会理工学研究科准教授を兼任。2007年から2010年まで美術批評誌『Review House』の編集長として編集・執筆にたずさわる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅん
11
独特の身体研究で注目を集める伊藤亜紗の処女作。想像以上にグッときた。「書く人」と思われてきたヴァレリーの身体性に着目する序論から面白く、その後もひたすら刺激的な議題がてんこ盛られてる。阻害や抵抗に出会うことで「持続」の感覚が生まれるという時間論、「拍子」のような客観的な反復を持たないものとしてのリズム論などは、魅力的ながら謎も多く、悩みながら読むのが楽しい。「詩」の定義は今までで一番納得した。表現や研究、そして生活とは何かを考えなきゃいけない時に最良のパートナーとなる本だと思う。夢や野望が湧いてくる。2020/10/27
Bevel
4
むちゃくちゃよかった。扱う主題が全部興味深い。議論も深い。著者の他の本も読みたい。2018/06/09
あくつさとし
1
ヴァレリーが目指した「詩による身体の解剖」とは、「私たちの他動性・偶発性と出会い、自己についての知を深める」こと。 その観点でいうと、この本自体も「詩」と呼べる。生理学と詩の繋がりが、ここまで明快に腑に落ちるとは思わなかったな。2020/03/27
kyakunon22
1
突然だけれど、私はヴァレリーが苦手だ。詩そのものを解さない私は、とりわけヴァレリーの常軌を逸したほどの精密さには近寄ることさえできない。 しかし、この本はそのような気持ちを少し和らげてくれる。何しろこの本によれば、ヴァレリーが論じたかったのは形式詩そのものではなく、「詩的なもの」らしいのだから。 本書はヴァレリーを、とりわけ「読者の読書体験」という水準に注目して展開していく研究である。私たちは詩句を読むことで知らない経験に出会い、身体を更新していく。2019/12/26
よよよよぴ
1
学ぶところが多かった、こういう主観的な議論の進め方と割り切り方と理解の仕方。美学の議論のやり方も学ばないとな。2019/08/02