内容説明
処女サリー・マーラが覚えたてのフランス語で記した、性に関する探究と、殺人事件“ダブリンの吸血鬼事件”などについての「日記」。サリーがゲール語で書き、ミシェル・プレルが翻訳したという、郵便局に立てこもった男たちがひとり残った女性郵便職員に悩殺される受難を描いた「皆いつも女に甘すぎる」。サリーが自分が書いたものではないと拒絶する、雑文集「もっと内密なサリー」。クノーが愛したジョイスにオマージュを捧げるかのような、サリーによる、クノーによる全集。
著者等紹介
中島万紀子[ナカジママキコ]
1973年、神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学大学院博士課程単位取得退学。リヨン第二大学DEA課程修了。現在、早稲田大学講師。専攻、フランス文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かわうそ
25
著者たる少女サリー・マーラが勉強中のフランス語を使って書くというややこしい設定の上に多彩な言葉遊びがちりばめられているのであろうため翻訳者の苦労が忍ばれるわけですがそれはさておき全編非常にくだらなくて楽しかったです。2015/09/19
pyoko45
9
「サリー・マーラの日記」がものすごく笑えました。サリーと家族とその周りのひとびとが繰り広げるホームコメディのような様相ですが、出てくる人たちはボケ役ばかりで話はぐだぐだ、ストーリーは安易に展開します。ボケにボケで返す家族たち、ときに探究心が暴走してトンデモないことをしでかす清純な乙女(!)サリーと彼女を取り巻く男性たち。みんな愛すべきひとたちです。おまけにサリーのあざといまでに時宜を得た言い間違い。非常に手の込んだくだらなさに笑わずにはいられないのでした。2011/10/22
erierif
5
クノーがサリー・マーラという架空のダブリン在住の少女名義で書いた日記&小説&雑文。クノー好き以外にはちょっと読みにくいかも?「サリー・マーラの日記」は勉強中の仏語で書くという設定でギクシャクした感じ等、仕掛けが凝っている。エロティックな事は隠すように書かれていて何度も読み返したり、どたばたとっ散らかっていたので読み終えるのに時間がかかった。ただし、日常なんて皆とっ散らかっているのかなと思う。小説「皆いつも女には甘すぎる」はサリーが書いたと思うと意味深い。日本には無いタイプの本なので面白かった。2012/06/23
兎乃
4
サリー・マーラとは、簡単に言ってしまえばクノーのペンネーム、でも、その性格はフェルナンド・ペソアの異名に近いと思う。アイルランド語で書かれた小説をミシェル・プレルという言語学者がフランス語に翻訳したという設定で初版刊行されたクノーの名前がないクノーの作品。読んだ時に感想書かなかったから今頃ノートから写してますが...。まぁ、もういいや。こういうの貼っておきます。http://www.waseda.jp/bun-france/pdfs/vol22/09%92%86%93%87121-134.pdf 2011/12/14
monado
4
設定といい発表の仕方といい、異常に手の込んだ、しかし最高にくだらない短編集。ひたすら作者自身につっこみながら読むことうけあいなので、レーモン・クノーファン以外には絶対にオススメできない!でもしちゃう!2012/01/05