内容説明
ムッソリーニ政権下のローマ。成金街の宝石盗難事件‐殺人事件。奮闘する敏腕警部。すったもんだに迷走する捜査劇。混乱。脱線。紛糾。そして、真犯人は…。
著者等紹介
ガッダ,カルロ・エミーリオ[ガッダ,カルロエミーリオ][Gadda,Carlo Emilio]
1893年、ミラノに生まれ、1973年、ローマに没した。理工科大学在学中、第一次世界大戦に従軍。卒業後は技師としてイタリア内外で勤務しながら作家活動を始める。方言や俗語、多くの言語を駆使した前衛的な作風で、イタリアを代表する小説家として世界的な評価を得る
千種堅[チグサケン]
1930年、東京に生まれる。1953年、東京外国語大学外国語学部ロシア語科を卒業、独学でイタリア語を学ぶ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
28
メルラーナ街で起こった殺人事件。だが真相を追求していくにつれてスパイ疑惑、盗難などの別の事件も明らかになっていき・・・・・。くるくる、廻って現れてくる事件達に目を奪われ、本質が見えなくなりそうになりながらもラストの収斂は力技のような感じがしました。しかし、人間の思考回路をこの本で見せられたような印象にも思えます。2013/06/12
ぴゃっぴゃ
5
この混沌に取り組んだのはいい経験になりました。なにしろ本筋に関係なさそうな枝葉が繁りすぎていて、油断すると自分がどこにいるのかわからなくなる。今までに読んだどの「読みにくい小説」とも違う手強さ。しかし再読はないかな…。2012/02/10
ハルト
5
恐るべしガッダ。びっくりした。まさかこんな結末だったとは。まさに混迷の体を為した作品で、読後、読者も混迷たる気持ちに。ミステリとしては──というかおそらくミステリとしては書かれていないんだろうけれど──置いてきぼりにされた迷子な気持ちに。でもムッソリーニ政権下でのローマの時代性や風俗、風景が感じとれる作品でよかったです。あと独特な文章や表現のしかたが楽しい。なんだかむずむず癖になる作風でした。2012/01/22
ヴィオラ
4
カルヴィーノが妙に推すから読んでみたんだけど…。いや、疲れた(^_^;)一応盗難も殺人も起こるけど、ミステリーじゃないよね、コレ?ミステリー成分だけ抜き出したら、多分10分の1くらいの厚さになるのでは?というくらい、脱線やら連想ゲーム的な記述で出来ています(^_^;)ラストもあんなだし…そういう脱線部分を楽しむ作品。で、楽しむためにも、校正はもう少し丁寧にして欲しかったよ(;Д;)誤字脱字多し。2012/04/20
rinakko
4
地図もなく、まさに混沌たるローマ。すったもんだに引き込まれ、文の一つ一つ、言葉の端々や細部への拘りを楽しんだ。物語として全体を眺めてみようとすると、途方に暮れる。変梃。突拍子もない脱線は面白かったが、遺書の朗読中に挿入される“双眼鏡をもったアザラシ”の件は、あまりのインパクトに呑み下せず、いつまでも喉に引っかかっていた。ドン・チッチョの風貌は、敏腕の割にぱっとしない。美青年への嫉妬が激しいのも恰好悪い。でも実はそれは、卑劣な輩を憎む心根と表裏一体なのだ。その反骨精神も推して知るべし…と、途中からは見直した2011/12/12