内容説明
テヘランからイスタンブールへ、そして少女の頃からのあこがれだったパリに逃れてきたロクサーヌ。孤独のうちに、十八世紀の思想家モンテスキューにあてて手紙を書く。いまわしい過去の世界を忘れられるのだろうか、新しい国・新しい言葉のなかで…。
著者等紹介
ジャヴァン,シャードルト[ジャヴァン,シャードルト][Djavann,Chahdortt]
1967年、イランに生まれる。現在、パリに在住。小説家、批評家。1993年、パリに移り、95年、社会科学高等研究院に登録。98年、修士論文『イランの教科書の宗教主義』を提出
白井成雄[シライシゲオ]
1933年、ソウルに生まれる。東京大学文学部卒業、同大学院修士課程修了。名古屋大学名誉教授。専攻、二十世紀仏文学・思想(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きゅー
10
ロクサーヌはイランからフランスに移民としてやってきた。彼女の念頭にあったのは期待と希望。しかし現実は、言葉の通じない彼女に重くのしかかった。そもそも彼女はなぜフランスに身よりもないままにやってきたのか、なかなか明かされない。私たちにとって、国と言葉と家族を捨てるという決心がどれほどまでに悲壮なものなのか、表面的な部分でしか理解できないのかもしれない。パリの空は青い。しかしその青さはすべての者にとって青いわけでもない。その恩恵から除外された者たち、楽園の外にいる者にとってその青さは冷酷な色でもあるようだ。2014/05/08
刳森伸一
4
イランで「普通ではない」という烙印を押され、その後、奇跡的に憧れのパリに居住することが許されることとなったロクサーヌの喜びと悲しみ、慣れないフランス語や過去という頸木などを「モ ンテスキューへの手紙」という形で昇華する。遠い異国の女性の苦しみが手に取るように分かり、久しぶりに感情が揺さぶられた。2019/05/17
イッパイアッテナ
0
憧れは憧れのままの方が良いのだろうか。パリでの自由も不自由さには負けてしまう。過去から逃げてもすぐに追い付かれてしまう。前進はなく現実もなく、ただ遠い遠い過去へ手紙を送ることで現在との繋がりをかろうじて保つ。自分の存在しない過去で眠る人よ、この孤独を共有しよう。2011/08/05
anniehappy
0
なぜこの本を読もうと思ったのか思い出せない。図書館で予約して随分経ってからの入手、まだ予約待ちの人もいる。新聞の書評欄ででも紹介されたのだろう。 さて、内容はモンテスキュー、イラン、フランスである。 日本でぬくぬくと生活していると、違う地域、文化圏の人がどんな環境で何を考えて暮らしているか、つい忘れがちである。 決して読みやすい本ではないが、今も自由を求めて、他の世界へ移り住もうとしている人は多いと思われる。また、不自由に気づいていない人、または初めから叶わぬことと諦めている人も多いだろう。2024/08/22