内容説明
鴎外が見聞した、2つの“帝国”の相貌。代表作『舞姫』の舞台となるこの新興都市で、少壮エリート森鴎外は何を実見し、日本の現実へと変奏させたのか?従来の人物像を刷新する、“都市空間の文学”の試み。19世紀後半のドイツを再現する貴重な図版、80点以上収録。
目次
第1章 ベルリンの路上にて―鴎外の足(「菩提樹下」の石畳;アスファルト;交通と制度;「普請中」の道路)
第2章 交通・身体・規律―「有楽門」をめぐって(「停留所に待てる群衆」;昇降口の秩序;日比谷公園有楽門)
第3章 都市の衛生―下部構造と権力(中庭の光景;ベルリンの水;「下水を汲む」鴎外;東京の衛生)
第4章 ベルリンの喫茶店にて―「バウエル茶房」と鴎外(カフェ・バウアー;鴎外とイタリア;情報センターとしてのカフェ;ベルリンのファスト・フード)
第5章 伝便と広告柱―鴎外と情報メディア(伝便;気送郵便;断絶したネットワーク;「小包郵便物に就て」;広告柱;林立するリトファス柱;「独身」の終焉)
著者等紹介
美留町義雄[ビルマチヨシオ]
1967年、東京に生まれる。立教大学文学部ドイツ文学科卒業、同大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ文学専攻)満期退学。日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、大東文化大学文学部准教授。専攻、ドイツ近代文学を基盤とした比較文学・文化研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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毒兎真暗ミサ【副長】
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明治44年。『舞姫』執筆のきっかけとなったベルリンでの鷗外の生活を綴る。公衆衛生の特派員としてベルリンに趣いた鷗外は当時の下水道改善を勉強し、カフェを堪能し新聞を読み。その裏側で『舞姫』や『魔睡』などの構想を練ってゆく。そんな、仕事の合間の端々に見え隠れする【毒々しさ】に当てられて。カフェ・バウアーで、東京日日新聞を読む鷗外。ゲーテの『イタリア紀行』、アンデルセンの『即興詩人』などに身を窶した鷗外。苦行なベルリン時代を文学に救われた男は、その後『独身』を経て軍医と成り。桜満開の道、栄華に旅立つのでした。2024/04/04