内容説明
一人でオーケストラを再現する、その目的を果たすため作った奇妙な楽器で、狂気じみた演奏を行う音楽家ガンバラ。唯一、酔ったときにだけ、天才的な演奏をすることができるとわかり、ある企てに巻き込まれていく…。フランスで本格的に音楽を論じた最初の小説といわれる表題作ほか、「音楽」と「狂気」が交錯する4篇を収録。
著者等紹介
私市保彦[キサイチヤスヒコ]
1933年、東京に生まれる。東京大学卒業、同大学大学院修士課程修了。武蔵大学名誉教授。専攻、フランス文学
加藤尚宏[カトウナオヒロ]
1935年、東京に生まれる。早稲田大学卒業、同大学大学院博士課程修了。早稲田大学名誉教授。専攻、フランス文学
博多かおる[ハカタカオル]
1970年、東京に生まれる。東京大学卒業、同大学大学院およびパリ第七大学博士課程修了。現在、東京外国語大学准教授。専攻、フランス文学
大下祥枝[オオシタヨシエ]
大阪に生まれる。関西学院大学卒業、同大学大学院博士課程中退、パリ第十二大学大学院博士課程修了。現在、沖縄国際大学教授。専攻、フランス文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まふ
92
人間喜劇の芸術/狂気部門の4篇。①「ガンバラ」:作曲家ガンバラが酒に溺れ、狂気のオペラを作曲し、美しい妻を失う。6年後変わり果てたガンバラのもとに老婆となった妻が戻る。②「マッシミラ・ドーニ」:相思相愛の二人だがストイックすぎてお互いに伝わらない、それを周囲の人が助けて恋を全うするという話。③「ファチーノカーネ」:ヴェネツィアの貴族ファチーノ・カーネの末裔という盲人の演奏家に遭い、巨額の財宝を取り戻しに一緒に行こうと誘いを受けるが、その男は1か月後に死んでしまう、という話。⇒2023/06/18
糞虫 ◆池袋
3
前からバルザックを読みたいと思ってたから丁度いいと思って読んだ。音楽家の話が出てくるがそれを文章で表せる彼の素晴らしい文才に敬服した。読むのに時間がかかるけどまた読みたい2011/04/02
amanon
2
表題作「ガンバラ」は途中で延々と繰り広げられる音楽論がかなり読み辛かった。また、この作品で特に言及されることが多かったロッシーニについても認識が薄いため、話の背景が今一理解出来ず。ただ、ガンバラが抱える才能と紙一重の狂気とも言うべき特性には興味を覚えたが。それから、ガンバラが発明したという楽器は後のシンクラヴィアの登場を予期させる気がする。最後に収録された「アデュー」はその陰惨さが何とも言えない余韻を残すということで、とりわけ印象深かった。本作中の二人の邂逅ははたして幸福だったのか不幸だったのか?2015/05/13
ありさと
1
シムノン経由で読み始めたバルザックだがめちゃくちゃ面白い。つうか「芸術/狂気小説選集」と「幻想・怪奇小説選集」が出てる時点で私の読むべき作家だった。「マッシミラ・ドーニ」のマッシミラもやはり狂ってると思うのは現代的な感覚? 理論に忠実な音楽が騒音でしかないという点で「ガンバラ」がシェーンベルクの前世というのはなるほどだが、酔って普通に聞こえるのはなんなのか知らん。「ファチーノ・カーネ」が一番普通の狂気かな。「アデュー」のステファニーは精神抑圧だがフィリップも恋の末に狂ったのだ。2014/08/14




