内容説明
現代のマンハッタン/暗黒の中世フランス、二つの世界が時空を超えて交錯する奇跡のパラレル・ストーリー。高校生が選ぶゴンクール賞受賞作。
著者等紹介
ヒューストン,ナンシー[ヒューストン,ナンシー][Huston,Nancy]
1953年、カナダのアルバータ州カルガリーに生まれる。英語を母語としてカナダやアメリカ合衆国で教育を受け、二十歳のときにパリに留学、ロラン・バルトに師事する。以後フランスに住み、フランス語と英語の双方で活発な執筆活動を続けている。1981年に長篇『ゴルトベルク変奏曲』でデビューして以来これまで十一の小説を発表、それ以外にも数多くのエッセイ・評論、子供向けの作品等を書いている
永井遼[ナガイリョウ]
1964年、宮崎県に生まれる。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。翻訳家
いぶきけい[イブキケイ]
1964年、島根県に生まれる。東京都立大学人文学部卒業(仏文学専攻)。実務・文芸翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
72
Nothingという意味を持つ小説家のナダ。彼女は生まれなかった双子の兄と自分を無視してきた両親への復讐のために中世ヨーロッパで苦難に翻弄される双子の物語を紡いでいく。謂れのない悪意に晒されるバルブの苦難と悪魔と会話がとにかく、痛々しい。特にナダが「中絶を何度もしたが、私は平気だった」という言をしていたが、初めての中絶から罪悪感に苦しんでいたことに胸が痛む。(そして相手は最低の下衆野郎なのがまた・・・)でも最後に『ファウスト』のメフィストフェレスの言葉が引かれているのにクスリ。ああ、彼女はきっと大丈夫だ。2016/05/03
星落秋風五丈原
25
彼女の作品は異なる時間軸を交錯させるパターンが多い。こちらは女性作家と彼女の作品を交錯させる。不幸な生い立ちに生まれた双子の男女。男性は美しい声を褒められ修道院で育つが女性はあちこちたらいまわしにされる。この小説で伝えたいこととは。2023/05/06
秋津
7
ソーニャの存在がうまく機能している。美しい。 自分と年の近い主人公で、背景は全く違うけれど何となく共通の部分があったので面白く読めた。私も自分をスコルダトゥーラだと思うから。2016/05/31
ふくさん
5
「時のかさなり」に感銘を受け期待して手にとりましたが予想に違わず素晴らしい作品です。作家の主人公ナディアが著す小説「復活のソナタ」。不協和音と命名する現実世界が交錯します。パラレルストーリーにありがちな読みずらさもなく一気に読了しました。著述することで魂の救済をはたすナディア、心中の悪魔との対話や葛藤が書き連ねられます。バロック時代の音楽、中世の文学や聖書からの引用も本作により一層の奥行を与えています。もっと読まれてよい傑作です。2014/06/08
はなみずき
4
文章がきれいで正確で、流れるよう。栞をいれていた最初がもったいなくて休日一気に読み終えた。色とりどりのリボンが交差されていくような、時代と人物の絡みがメリハリあって、でもごちゃごちゃ不明確でない。かえってどちらの人物の感情、境遇にも共感というか厚みを加えてしまうような。。。複雑なのに曖昧でなく。圧倒された、こんな境遇でも受け入れて生きてしまうことを憎まないしぶとさに。そして人が違えば結果的に人生に終止符をつけてつまづいても、それでもつながっている家族の絆の強さと優しさがすごく温かかった。弱さとか強さとか単2010/06/27