内容説明
二つの太陽、二つの月が輝く絶海の孤島での「機械」、「他者性」、「愛」を巡る謎と冒険。
著者等紹介
ビオイ=カサーレス,アドルフォ[ビオイカサーレス,アドルフォ][Bioy Casares,Adolfo]
1914年、ブエノスアイレスに生まれ、1999年、同地に没した。小説家
清水徹[シミズトオル]
1931年、東京に生まれる。東京大学文学部卒業。明治学院大学名誉教授。専攻、フランス文学
牛島信明[ウシジマノブアキ]
1940年、大阪市に生まれ、2002年、東京に没した。東京外国語大学大学院修士課程、マドリー大学大学院博士課程修了。東京外国語大学教授を務めた。専攻、スペイン、ラテンアメリカ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
市太郎
53
これは傑作だった。表紙から抱いていたイメージは鮮やかに裏切られた。私のような未熟な読者は解説まで読んで、さらに考えて考えて調べて・・・この小説の凄さにまた改めて気づくわけだが、やはりこれは傑作だったと叫ぶほかない。SF、ミステリ、恋愛、幻想どれにでも当てはまりそうだが、ボルヘスから完璧と言われ、ジャンルを超越したかのような存在感がある。この内容、性質からいってネタバレ厳禁であろうが、この小説はいつでも確実に切実に読者を必要としている、とだけは言っておきたい。後は一度読んでみて、という事ぐらいしか言えない。2013/12/08
長谷川透
39
人間の存在を肉体と霊魂(精神)の二元論から説いたような小説は巷に溢れているが、この小説は更に模写された映像という要素が加わる。第三の要素の介入は物語を俄然面白い物にする。又、信用できない語り手の存在は、読者までもを肉体、霊魂、映像が渾沌とするミステリアスな世界に誘い込み、『モレルの発明』の謎を解きながらも、モレルの仕掛けた哲学ゲームへの参入を果たすことになる。文章は平易で語られる内容も決して難解ではない。それにも関らず二百頁ほどの長さでこの世界を創り上げられるとは、感服の思いである。疑いようのない傑作だ。2012/11/26
touch.0324
36
鼓膜が震えるような、舌が置き場を失うような、陶酔とも混乱ともつかない読後感。目眩すら伴う読書体験であった。あらすじはこう。罪を犯し警察の手を逃れ絶海の孤島に辿り着いた"私"は、無人のはずのその島に自分以外の男女の一団を発見する。彼らを追手と思い込み遠巻きに監視するにつれ、"私"は一人の女性に思いを寄せてしまう。逡巡の末彼女の前に姿を現した"私"に、彼女は……。物語は一人称の手記の形式をとる。ページをめくるにつれ、彼らの正体やモレルの発明の謎が薄皮をはがすように解き明かされてゆく。2014/10/28
マリカ
29
愛は死や完全なる無関心を乗り越えることができるのか。愛しい人への想いと想像力が時空をゆがませ、永遠に繰り返す非現実を創造する。叶えられない愛に対する一つの答え。この小説のプロット自体が偉大なる発明だと思う。2016/08/23
zumi
26
アルゼンチンのロブ=グリエ。マジ傑作。『覗く人』『迷路のなかで』『嫉妬』で見受けられる幾多の技法を網羅し、かつベンヤミン、フロイト、ロザリンド・クラウス、ブランショにバフチン、宮川淳に木村敏らが提示したような理論をも取り込みながら、テクストの内外の循環構造と、〈読み/書き〉の根本的な問題に対する方法意識で完全なる虚構を確立させたあまりに見事な作品。同時にSF的でもあり推理小説的でもあるなんて、贅沢すぎる。ボルヘス曰く「完璧な小説」。何度でも読みかえしたい一作で、リャマサーレスと並ぶ今年の大当たり。2014/10/11