内容説明
作品から作者の姿を消すことを理想とした現代文学の先駆者は、何を思い、何を愛し、何をなしたのか。恋多き芸術至上主義者の日常を再現した伝記文学の白眉。
目次
繭の時代
初めの書き物、初恋
習作と夢想
ユラリー・フーコー
エリザ
岐路
不幸
ルイーズ・コレ
旅と旅の計画
オリエント
『ボヴァリー夫人』
作品、出版、訴訟
『サランボー』
社交界の生活
新しい友、ジョルジュ・サンド
『感情教育』
戦争
さらなる孤独へ
劇場幻想
『三つの物語』
『ブヴァールとペキュシェ』に戻る
未完の原稿
著者等紹介
トロワイヤ,アンリ[トロワイヤ,アンリ][Troyat,Henri]
1911年モスクワ生まれのロシア系フランス人作家。1935年に処女小説『ほの明かり』を発表して以来2007年に九十五歳で没するまで精力的に執筆活動をつづけ、大衆作家、伝記作家として多数の著作を残した。とくに伝記は三十二作におよび、わが国でもすでに数多くの作品が翻訳紹介されている。主な著書に、『蜘蛛』(1938年、ゴンクール賞受賞)等がある
市川裕見子[イチカワユミコ]
東京大学教養学科イギリス科卒業。同大学院比較文学・比較文化博士課程単位取得。現在、宇都宮大学教授。専攻、比較文学
土屋良二[ツチヤリョウジ]
東京外国語大学フランス語学科卒業。同大学院外国語学研究科修士課程修了。現在、津田塾大学、白百合女子大学ほか講師。専攻、十九世紀フランス文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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星落秋風五丈原
10
小説では複数の人物からいろいろな要素を寄せ集めたキャラクターを作って、複雑な人物像を作り上げているといるのに、リアルでは複雑を嫌う。それは、人間と深くかかわらなかったということではないだろうか。作家や文筆業関係の友人は多くいたというのに。彼は、そんな生き方で果たして幸せだったのだろうか。その答えはもう誰も知ることができない。彼の持論は「登場人物が生命を得るのは、作者がその背後に姿を消すことで可能になる」であり『ボヴァリー夫人』で自らを投影した主人公を描いて以来、きっぱりと読者の前から姿を消してしまうのだ。2015/02/05
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