内容説明
パリ生まれの若者がアメリカ合衆国の陸軍に徴兵され、訓練を受けた後に、海外に派兵されることになる物語。ときは朝鮮戦争のさなか、サンフランシスコから朝鮮への出航を前に特別休暇を与えられた若者は、軍の手違いから南部ノースカロライナからニューヨーク州北部の訓練地に給与を受け取りに行くことを余儀なくされ、かくしてオンボロの愛車に乗って5日間の旅が始まる。物語はさまざまな枝葉に分岐し、脱線を繰り返しながら時間と空間を飛び越え、若者の過去の断片が浮き彫りにされていく。飢えと音楽とセックスの体験が語られ、語り手は本筋から政治、文学そしてアメリカという国家などについての議論へと逸脱しながら、読者を笑いの渦に巻き込み、まさに抱腹絶倒させる。“旅の物語”から“物語の旅”という未聞の冒険。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
田氏
12
アメリカ横断の旅に出ようとする若者の話だが、そんなのはマジでどうでもいい。下水に流せ。「進むにしたがってそれ自体を打ち消してしまうような話を書きたい」という宣言どおり、タイポグラフィ的にも構造的にも破壊されていく小説。これを朗読する「間接的な語り手」と断りなしに一人称が入れ替わり、朗読の聴衆と質疑応答や罵り合いを始め、あまつさえ聴衆が勝手にストーリー(そんなものの存在すらも疑わしい。下水に流せ。)に乱入する。定価5千円の本を蔵書する気概があなたの自治体にあれば、ぜひ図書館で手にとって頂きたい。下水に流せ。2019/05/11
にっつぁん
1
これほど読者であることを意識しながら読み進めていく小説はほかにないかもしれない。2011/08/17
だいこ
0
タイポグラフィック…この言葉にときめくなら読んで。迷うなら本屋でページをめくって。きっと欲しくなるから。