内容説明
雄大な叙事詩的物語は最後の大団円を迎える。エルサレム奪還を目指す十字軍の遠征から、自由都市ミラノと神聖ローマ帝国との戦いへと、舞台はボヘミアとモラヴィアから世界史へと大きく拡大してゆく。ヴィティコーは数々の武勲により森の領主となって、美少女ベルタを娶り、とうとう自らの城を築く。しかし作者の筆は、永遠の時を振り返るかのごとくに、静謐に、淡々と進む。あたかも、森に咲く薔薇をキャンバスに描く画家の絵筆のように…。ドイツ語以外の言語によってはこれまで刊行されたことのないこの大長篇小説の、訳者畢生の邦訳も、本巻をもって完結する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tieckP(ティークP)
4
後書きに、ドイツ語の誤訳については畏れていないが、訳す日本語能力があるか畏れていると書いてあるとおり(この畏れるも「恐れる」がいいと思うけれど)、きっとシュティフターのドイツ語に人生を捧げてその声は聞き取れているけれど、日本語にうまく置き換えられなくて苦しかっただろうな、という印象。とはいえ日本語のミスについては読者は(興をそがれつつも)認識できるから、原語に正確なだけで価値がある。一巻と二巻には登場人物一覧もあって、訳者の丁寧さに愛情が見られる。内容は二巻までとそう変わらない、シュティフターらしい作品。2013/08/07
きりぱい
4
完結の3巻。隊を指揮し、手厚くねぎらう様子はすっかり貫禄のヴィティコー。戦線を読むだけでなく、人の心にも重きを置くヴィティコーに大公の信任は厚くなるばかり。モルダウ河岸の森に築城し、ひととき平和が続くも、罪を悔い許されてなお刃向かう輩、思わぬ裏切りと油断できない構成!大公はボヘミア国王となり、諸外国と共にイタリア遠征へと。「われらが髪に霜を置くとき、われらは杯を手に二人して座り、過ぎ去りし日々を語り歌わん。だが、今はわれら共に生きいきと今の時を生きようではないか。」男たちの敬意と結びつきに泣きそうになる。2011/04/15
comcom
1
3巻に入っていきなりヴィテコーが青年から大人へと変わっててびっくりしましたが、相変わらず淡々と時間が過ぎていきます。3巻でほかの登場人物の人生も丁寧に書かれていて1巻に戻ってヴィテコーとの出会いから読み返したい気持ちになりました。2009/12/10