内容説明
日本初の南極観測船として知られる「宗谷」。だがそれ以前の「宗谷」について知る人は少ない。耐氷型貨物船として建造され、海軍特務艦となった「宗谷」は、幾多の戦火を潜り抜け、戦後は引揚船として多くの同胞を帰還させた。その後、灯台補給船として全国を巡り、六回の南極観測にも従事。最後は巡視船として北の海の守りにつく。昭和という時代をひたすら働き続けた「宗谷」の生涯を乗組員や関係者の証言をもとに綴った著者初のノンフィクション。
目次
第1章 「宗谷」はこうして生まれた
第2章 海軍特務艦「宗谷」
第3章 危険な輸送任務
第4章 引揚船として、再び
第5章 命懸けの逃走
第6章 海のサンタクロース
第7章 「宗谷」南極へ
第8章 「宗谷」外伝
著者等紹介
桜林美佐[サクラバヤシミサ]
昭和45年、東京都生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒業後、情報番組(TV埼玉)のアシスタントオーディションに合格し、平成4年よりフリーアナウンサーとして始動。平成8年、番組ディレクターとして活動の場を広げ、TBS「はなまるマーケット」等の番組を制作。平成13年、経済ニュース番組(三重TV)キャスターに選ばれ、再びカメラの前へ。現在はキャスター、ナレーターとして、また放送作家としても活動する一方、国のために戦う人々の姿を描いた自作の創作朗読ライブ「ひとり語りの会」を展開中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いちろう
4
アニメ宗谷物語もみて読むと、40年間大切に働いた宗谷も素晴らしいが、大切に物を使う。使った先祖も素晴らしい!2019/02/01
どすきん
2
『「宗谷」の昭和史―南極観測船になった海軍特務艦』では、その名の通り史実を丹念に追っていたが、本書では関わった、あるいは多彩な顔を持つ船に乗った≒助けられた人血の話。引き上げ船時代のエピソードとして「通信乙女」の話も絡めているが、3年くらい時代がずれている。なお、「昭和史」で読んだ筈だが、本書に添えられた地図で南極へ向かう航路を視覚的に理解出来た。2018/05/29
yamatoshiuruhashi
2
戦後生まれ、高度成長期に育った我々にとっては「宗谷」は南極観測船だった。樺太犬を残置し多くの犬は死んだもののタロ、ジロの兄弟だけは生き残った話、何度も氷海に閉じ込められソ連やアメリカの最新型の船に救われた話。それぞれ断片的に知っていた話が、「宗谷」を主人公に語られることで繋がった。戦前のソ連からの発注で作られ、日本の軍艦として任務を果たし戦争を生き抜き、戦後は沢山の人々の引揚げに従事し、回路安全確保のために灯台を支援する船となり、巡視船となり、南極観測船となる。まさに日本の歴史の証人である。2015/03/01
黎雪
0
南極観測船としてしか知らなかった「宗谷」の、知ろうとして調べない限り知ることのできない戦前・戦中・戦後の姿を知る手がかりになる本でした。東京まで、「宗谷」に会いに行きました。大戦を戦った船が今も船として航行可能な状態で生きているという事実に胸を打たれました。学芸員さんが一人で掃除や手入れをしていらっしゃるようですが、貴重なお話を伺うことができました。都市開発計画の関係上解体の危機にあるということでしたが、貴重な歴史を体現する船ですので、国が保存してくれることを願います。2014/01/08
ころぽん
0
南極観測船としての「宗谷」の逸話はよく知られているが、戦前に特務艦として軍属に入るまでの経緯・砕氷船にもかかわらずなぜ南方戦線に参加し、どんな働きをしていたのかを知りたくて読んだ。著者もあとがきで記しているが、「宗谷」そのものの話というよりも宗谷に縁のあった戦前・戦中の人々の記録としての色が濃厚。実際に乗船していた貴重な証言ではあるのだが、一方で著者の個人的な思想が行間ににおい立ち過ぎている印象もあり、学術的な客観性を担保出来ているかは正直微妙。そういう本だと思って読む一冊だろうと思う。2019/02/26