内容説明
ベランダの手すりの隙間から夜闇を見透かし、雨の日は網戸に鼻すりつけて、変わりばえしない風景を飽かずに眺めている。おもわしげな猫背のうしろ姿、かしこそうに立った耳が人には見えない世界をうかがっている。名前を呼んでも知らんぷり。「なに見てる?」ときいても答えない。背をむけたまま、じわりと後方半回転ひねりしたそのおいしそうな耳を、うしろからぱふっとくわえると、ぷるぷるっと痙攣させてあわてて引っこ抜いた。
ベランダの手すりの隙間から夜闇を見透かし、雨の日は網戸に鼻すりつけて、変わりばえしない風景を飽かずに眺めている。おもわしげな猫背のうしろ姿、かしこそうに立った耳が人には見えない世界をうかがっている。名前を呼んでも知らんぷり。「なに見てる?」ときいても答えない。背をむけたまま、じわりと後方半回転ひねりしたそのおいしそうな耳を、うしろからぱふっとくわえると、ぷるぷるっと痙攣させてあわてて引っこ抜いた。