内容説明
本書は、近年の第三次人工知能ブームに抗して、J.M.エーデルマンの神経細胞群選択説を通して私たち人間の自然知能の特性の一つを、神経細胞群の双方向的同期である再入力変性システムに見出すとともに、そのシステムによって生み出される類推思考の創造性に着目したものである。非言語領域のアナロジーは、就学前児童が自然に身につけている推論力である。彼らは数少ない経験・知識(既知)によって自らの疑問や課題(未知)を解明するのだ。就学前児童がアナロジーによって得た経験・知識のことを「学校前・外知識」と呼ぶとすれば、プログラマーが外からプログラムやアルゴリズムを入力して動かす人工知能と同型の学校教育は、幼児特有の学校前・外知識を無視してきたことになる。現在の学校教育(学校知識)を改善するために、本書では、極地方式のルール学習や授業方式が、アナロジーからアブダクションへの移行をビルトインしていることを解明している。
目次
1 自然知能と再入力―G.M.エーデルマンの神経細胞群選択説(自然知能の再定義;神経細胞群選択説における三つの原理―再入力を中心にして)
2 自然知能としてのアナロジー(未知と既知を繋ぐ推論;就学前児童のアナロジー ほか)
3 アナロジーと演繹・帰納・アブダクション(分析的推論と拡張的推論;演繹・帰納・アブダクションの相互比較;他の推論からみたアナロジー)
4 アナロジーからアブダクションへの進展(ルール学習におけるアナロジーからアブダクションへの移行;ブートストラッピング・サイクル理論におけるアナロジーからアブダクションへの移行)
5 学校知識を駆動する演繹的推論(学校知識の構成法―要素還元主義を中心に;増殖する学校知識)
著者等紹介
中井孝章[ナカイタカアキ]
1958年大阪府生まれ。現在、大阪公立大学生活科学部客員教授。学術博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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