内容説明
タンザニアの奥地にあるゴンベ動物保護区。ここで40年近く、チンパンジーの観察研究に取り組んでいるジェーン・グドールは世界中のナチュラリストの憧れの人だ。本書は星野道夫がジェーンを訪ねたわずか10日間の旅の記録である。
目次
アフリカだ!アフリカだ!
東京発12時40分チューリッヒ行き
タンザニアへ
ダルエスサラーム、ジェーンの家
キゴマ、そしてタンガニーカ湖
ゴンベの夜
森の問題児フロド
ジェーンの滝
ぼくのファンタジー
タンガニーカ湖の浜辺で〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やま
74
星野道夫が、東アフリカのタンザニアのタンガニーカ湖に面したゴンべ国立公園(ゴンべの森)で野生のチンパンジーとふれあう写真集と物語です。ゴンべの森の住人ともいえるジェーン・グドール研究所のジェーン・グドール女史の案内で星野道夫は、美しいタンガニーカ湖の自然を堪能し、野生のチンパンジーとふれあい、その中にとけこんでいきます。ジェーン・グドールは、40年にわたって、ゴンべの森で野生のチンパンジーの観察研究を続けて来ました。🌿続く→2022/09/08
めしいらず
60
静まり返ったアラスカのツンドラの大地。対照的にアフリカの熱帯雨林の中は数多の生命の賑わいだ。どちらも過酷な自然だと私たちは言う。しかし彼らは自分たちが住まう環境が当たり前。過酷だなどと思う者はいない。往き過ぎる者と暮らす者の意識の乖離。また動物保護のお題目を唱える文明社会と、密猟しないと家族を養えない現地の人たち。彼らに密猟させているのは同じ文明社会であることの矛盾。チンパンジーのフィフィと肩を並べ座るジェーンの後ろ姿。二人の絆は確実にある。互いが今そこに存在し、それを許し合っている。そんな美しい一瞬だ。2018/02/20
ぶんこ
56
この本が遺稿との事。文中、雨で離陸が危険な中、1歳の息子さんの写真を眺めるとあり、胸が痛む。アフリカでチンパンジーの生態を研究しておられるジェーン・グドール博士の本を読んでアフリカ訪問の夢を果たす。タンザニアの世界一大きな汚染されていない湖タンガニーカ湖に面した小さなゴンベ国立公園での10日間。フロドは人間の命をも脅かす乱暴者のチンパンジー。到着早々星野さんもジェーンも襲われる。それでも殺生をしないで見守る。密猟をしないと家族を養えない現地の人。密猟させる人がいるからだということ。自然保護は難しい。2022/09/20
KEI
42
読友さんに本書を勧められて。チンパンジーの研究者ジェーン・グドールさんらと共に、星野さんがタンザニアのコンゴの森にチンパンジーを見に出かけた10日間のエッセイ。アフリカと星野さんが住んでいるアラスカとは遠く離れているが抱える問題は近代化の波と自然保護である。その中で星野さんは思う。「風景を眺めているようで、多くの場合、私たちは自分自身を含めた誰かを思い出しているのではないか」「クマと出会うのではなくその風景を天空から見ている様な自分を考えることで人間のいない世界へ流れる自然の気配を想像する不思議さである」2021/09/16
おさむ
38
読メ友さんに教えてもらった星野道夫の最後の書き下ろし。アラスカで熊に襲われて亡くなる直前にアフリカを訪れていたとは知りませんでした。生物学者のジェーン・グドールと共に森林に暮らすチンパンジーを観察する10日間の旅。静かな針葉樹林帯と対照的な生命力溢れる熱帯雨林。しかし、星野さんの眼差しは変わりません。「風景を眺めているようで、多くの場合、私たちは自分自身を含めた誰かを思い出しているのではないか」「風景とは言い換えれば、人の思い出の歴史のような気もする」。亡くなる前のメッセージのように心に沁み入りました。2019/09/20