内容説明
ネッドは11歳になろうとしていた。11歳の誕生日は大切な日だとうだれもがいう。「13歳になるまでになにもかもおぼえなくてはいけない。」とミセス・スカラップ。パパは「いそぐことはない。」という。ママは「11歳っていい年ね。」といって、ネッドが生まれた日のことを話してくれた。ヒラリーおじさんは、誕生日に空気銃を贈ってくれた。パパは、銃を使うのは、まだはやいから、屋根裏部屋にしまって置くようにいう。だが、その夜、空気銃をもちだしたネッドは撃つ気もなしに、闇の中で銃をかまえ、黒い影が動いた瞬間、引金をひいてしまう。秋から冬へかけ、ネッドは悩む、自分が傷つけたかも知れないこと、ママとパパの信頼を裏切ったこと。そして、ネッドは老人のスカリーさんの家に手伝いにいく。傷ついたねこがスカリーさんとの結び付きをいっそうふかめていく。長い冬の苦しみを越え、春とともに、ネッドのなかに生きるために一番大切なものが育っていく。小学生高学年以上。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
絵本専門士 おはなし会 芽ぶっく
15
少年ネッドは牧師のお父さんとリュウマチの持病をもつお母さんとの3人暮らし。11歳の誕生日におじさんから空気銃をプレゼントされるも、危ないからと取り上げられる。けれど撃ってみたいネッドは夜中こっそりと銃を持ち出し…。うそをついた罪悪感にさいなまれるネッドが、隣人のスカリー老人に心をよせることによって成長していく姿が良かった。2020/06/15
ぱせり
5
銃を撃つ、ということが、(無垢でいられた)子ども時代との決別の儀式のようになってしまう。その後のネッドの苦しみは、ヘッセ『デミアン』の明暗二つの世界を思い出させる。最後に、ネッドが小さいときから眺めていたおなじみの光景を、わたしも、彼と一緒に眺める。陰影を増して目の前に広がる光景を、美しいと思う。2018/10/09
ほっそ
3
大人の入り口でもある年齢の少年の気持ち。親に秘密を持つ後ろめたさ。なかなか奥が深い作品だと思いますが、やっぱりアメリカだ! 11歳の誕生日におじさんから、「銃」をもらうことから、物語が始まることに、激しい違和感があります2010/03/04
菱沼
2
『そして、ねずみ女房は…』からの本。意地悪な人は、自分を意地悪だと思っていないのかもしれない。嘘をつく人は、きっと自分が嘘つきだということを知ってる……と、主人公ネッドは思うのだけれど、自分のついた嘘を真実のように思いこみ直すことのできる人もいる、と、十一才の何倍も年をとった私は思う。ネッドは、十一才の誕生日の夜から、少しずつ高くなっていく「うそのはしごのてっぺんに支えもないまま乗っている」状態になってしまった。善良さは、無言のままで罪人を責める。そんなふうに善に責められる罪人は、救われるべきだと思う。2014/12/17
Lisa Tada
1
訳文が しっとりしていて 素晴らしい。 内容も 子供から 少年へと成長していく心の移ろいが みずみずしく描かれていて、良書。2019/09/24
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- 和書
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