出版社内容情報
東京にも林業が残っていた! 山林労働者の生の声を記した貴重な聞き書き。リンギリ・木馬・水車製材…失われた山の技と暮らしぶりが、いま鮮やかに甦る。
はじめに 小さな呼びかけとして 5
聞き書き・その一 木住野 定男さんに聞く 9
見習い時代 見て覚える(技術を盗む) 11/親 方 毎日17日に金を渡してくれる 12/チェーンソー でかくて重くてとてもじゃなかった 13/大刈り 鎌と腰鋸ですんだ 14/製 材 一番難しいのは「腰入れ」 15/枝打ち 太くなってから打ってもダメ 17/リンギリ 伐った木を積んで乾かす 19/リンを落とす 定尺にして1本ずつ 21/リン足 真ん中2本は少し高く 22/皮を剥く 土用から秋祭りまで 23
リンギリとは? 26
聞き書き・その二 谷合 秀男さんに聞く 29
戦中・戦後 枝のとりあいで喧嘩 31/山仕事につく 小さくても大人と同じ 32/賃 金 会社専属と臨時雇い 33/給料(手取り)の決め方 クジ運に左右される 34/山仕事の朝 よく働きよく食べた 34/製材工場 雨の日の仕事 35/親 方 社長との窓口 35/足場丸太 一番値がよかった 36/電信柱 傷の検査はうるさい 37/植 林 1町歩(1ha)4000本の密植 38/下刈り 送り刈りでやった 40/枝打ち 落としすぎくらいに 42/道 具 昔は月星、今は土佐 43/柄 自分で作る 44/研のすごさ 四分一も挽けた 74/木挽き 山での手挽き 74/挽くコツ 目立てが勝負 75/木挽職人 伐採もうまかった 77/立木を伐る 根をできるだけ低く 77/架線を張る 人の山を通す苦労 78/市場に出す 端から端まで売れた 79
コラム
伐倒方法いろいろ 21/青梅林業地」について 24/青梅林業のはじまり 32/西多摩林業地のさまざまな顔 49/江戸の火事と青梅材 76
森と人との多様な関係性の回復を求めて 山本 信次 81
「正解」の林業に対する疑問 81/間伐も枝打ちもしなかった 82/時代が求めた施業体系だったが… 83/ローカルでオリジナルな林業へ 85/名もなきヤマとマチの対話を 85
あとがき 87
参考資料一覧 90
このブックレットは、戦後、東京・西多摩地域(注1)の山で林業に携わってきた3名の方から聞き書きを行った記録です。私たち・東京の林業家と語る会(注2)では、このような方々を「山の親父」と呼んでいます。いわゆる有名林業家というのではなく、ごく普通の山の働き手として、山仕事で生計を立ててきた人達。その「山の親父」たちの肉声を、今ここで改めて聞き直し、残しておきたいと思い、このような形でまとめてみました。
これからご紹介する「山の親父」たちの話の中には、リンギリ・木馬・水車製材など、忘れられつつある往時の林業技術、というより「技」(技能)が登場してきます。これらの「技」は、当時の「山の親父」たちにとっては、できて当たり前のものでした。その「技」が、高度経済成長の過程で、プッツリと糸が切れるようになくなってしまったような気がします。その糸を、もう一度ここで結び直せないかと、やや無謀なことを考えて、今回の聞き書きを行いました。聞けば聞くほど、同じ西多摩地域であっても、山によって、働く人によって、多様な山仕事(林業)が行われていたことに気づかされ、知らず知らずのめり込んでしまいました。
しかし、いかんせん私たちにう「山の親父」の声に、心をむなしくして耳を傾け、その「技」に身体ごと浸ってみることで、日本の森林・林業についての理解が深まり、森林と人とのかかわり方にも、これまで以上の広がりと奥行きが得られるのではないか。そんな試みを、それぞれの地域で、それぞれのやり方で展開してはどうだろうか――という小さな呼びかけをしてみたいのです。
このブックレットに込められたささやかな願いを心の隅においていただき、ページをめくっていただけるならば、これに過ぎる喜びはありません。
(注1)西多摩地域…東京の林業地。東京の森林は、多摩地域の西部(青梅市・あきる野市・ 日の出町・桧原村・奥多摩町)に集まっています。西多摩地域の面積の80%以上が森林で、 その5分の3がスギやヒノキなどの人工林となっています。
(注2)東京の林業家と語る会…山仕事に興味を持った都市住民が1993年につくった自主 的な勉強会。東京の林業に関しては資料等が少ないので、林業経営者や森林関係者の話を 直接聞くイベントなどを行っています。特に最近は、林業労働者からの聞き書きに活動の 重点を置いています。詳しくは、『遊ぶ! レジャー林業』(羽鳥孝明著、2001年、日



