出版社内容情報
「自由貿易」と「環境問題」の狭間で、複雑な綱引きが展開されている木材貿易。刻々と姿を変えるその全体像を初めて描き出しました。主要林産国と多国籍企業の戦略も最新データで分析。
第1章 世界の木材需給と生産の担い手構造(村嶌由直)
第1節 世界の森林資源
第2節 世界の木材需給
第3節 木材企業の国際的展開
第2章 世界の木材貿易の現状と特徴(荒谷明日兒)
第1節 人工林材化と高付加価値製品化
第2節 FAO統計からみた生産・貿易構造の変化
第3節 わが国における輸入構造の変化
第3章 世界の木材貿易と環境問題(荒谷明日兒)
第1節 環境問題の大きな変化
第2節 木材貿易とITTO
第3節 森林・木材認証と木材貿易
第4節 環境問題と自由貿易
第4章 北米の木材産業と貿易構造(武田八郎・加藤滋雄・大田伊久雄)
第1節 北米の木材需給
第2節 カナダの木材産業と貿易構造
第3節 アメリカの木材貿易構造
第4節 北アメリカの環境問題と木材産業
第5節 木材貿易をめぐる政治経済問題
第5章 東南アジアの木材貿易と産業(荒谷明日兒)
第1節 東南アジアにおける木材産業の展開
第2節 フィリピン-木材産業の開花以前に枯渇した資源
第3節 合板産業によるインドネシアの木材加工工業化
第4節 インド対象とその概況
第2節 林業生産・林産物輸出の品目別動向と主要国
第3節 主要林産物輸出国の動向と森林規制の現状-産業用丸太輸出国であるカメルーンの場合-
第4節 林産物輸出の経済的意義
第10章 中国の木材消費構造と木材貿易(村嶌由直)
第1節 木材需給構造
第2節 林業と木材産業
第3節 木材貿易
第11章 日本の紙バルプ産業とチップ貿易(武田八郎)
第1節 日本の紙パルプ産業の原料基盤
第2節 世界の木材チップ貿易における日本の位置と輸入動向
第3節 紙パルプ産業の海外植林の展開過程
第4節 人工林業のグローバル化と紙パルプ産業
索引
" 世界の木材貿易は拡大してきた。世界の林産物貿易は輸出入合計年間2,500億ドル規模で行われ、アメリカ、ヨーロッパ、日本などの先進国に集中している。他方、開発途上国の貿易は、先進国の消費・生産の拡大を背景にして、そのシステムに組み込まれる形で展開してきた。
FAOがはじめて森林破壊の現実を明らかにしたのは1981年であった。これによると、世界の森林の年間消失面積は約1,000万haから1,130万haと推定され、そのほとんどが熱帯林の破壊によるものであった。その後の調査においても、森林の消滅や破壊に歯止めがかからず、1990年代前半の熱帯林の減少面積は年平均1,259haに達していることを明らかにしている。
熱帯林の減少は、地球環境問題としても無視できないものとなった。1992年の地球サミット(国連環境開発会議)では、森林の減少と劣化に対処するため「アジェンダ21」に持続可能な森林経営の行動計画をまとめるとともに、最初の世界的な合意である「森林に関する原則声明」を採択した。この「原則声明」には、先進国の自由貿易の主張と資源保有途上国の資源利用権の主張が盛り込まれたものの、森林の保護・環境保全の論理がそれらに優先する内容になっている。ここに時"