内容説明
活字メディアと読者の関係を媒介する書店や図書館といった読書装置。これらの読書装置が集中し、濃密な読書空間を形成していったのが、大正から昭和初期にかけてのモダン都市・東京であった。大衆化しはじめた円本や雑誌メディアの動態学を、サラリーマンや労働者読者の日常生活に即して描く本書は、「読書の都市」東京をフィールドとする読書史の試みである。
目次
第１部 読書装置の動態学（モダン東京の読書地理；大正期東京の「雑誌回読会」問題）
第２部 活字メディアの大衆化（初期『文芸春秋』の読者層；円本ブームと読者）
第３部 労働階級と「読書階級」（労働者が『中央公論』を読むとき；サラリーマン読者の誕生）
著者等紹介
永嶺重敏［ナガミネシゲトシ］
１９５５年鹿児島県生まれ。九州大学文学部卒業、図書館短期大学別科修了。東京大学経済学部図書館、法学部附属明治新聞雑誌文庫を経て、現在、東京大学史料編纂所図書室勤務。日本出版学会、メディア史研究会、日本図書館情報学会会員。著書に『雑誌と読者の近代』（日本エディタースクール出版部、１９９７年、日本出版学会賞、国立大学図書館協議会賞受賞）ほか
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
K.H.
9
明治以降の東京を主な舞台に、雑誌や円本といった新しいメディア、サラリーマンという中産階級、そして彼らが本を読む空間としての通勤列車、といった具合に近代化の過程で生じた読書に関わる現象を追う。著者の本ははるか昔に読んだことがあるけれど、主題は変わらないながらも面白く読めた。2024/05/11
つまみ食い
3
読者層と活字メディアという従来の読書に関する研究では一般的だった二項に加え、読書装置（書店、図書館、貸本屋）や読書空間（通勤時間、書斎…）に注目し主に大正から昭和初期にかけた読書空間の急激な拡大と変容を描き出す労作。特に雑誌としての文藝春秋の持つ意義は個人的に興味深かった。2023/01/20
-
- 和書
- ちびでぶカバくん
