出版社内容情報
《内容》 近年の内視鏡医学の進歩はめざましく,内視鏡治療の適応基準拡大が積極的に試みられている.内視鏡治療は外科的治療と比較して,簡便性・侵襲の低さから,その臨床的・社会的需要は年々高まっている.
このような背景のもと,消化器内視鏡領域では,内視鏡治療手技の習得を目指す医師達が後を絶たないわけであるが,最近,テクニックの習得ばかりに奔走し,病態に基づいた術前診断学が軽視されている風潮がある.診断学は,薬物治療・内視鏡治療・外科的治療などの治療方針を決定するうえで必要不可欠の重要なステップであり,正確な診断なくして正しい治療はありえない.
本書は,とくに内視鏡診断学を中心に初学者から中級者までの先生方に実践的に役に立つ内容を目指した.さらに,内視鏡画像診断のみでなく,病歴・症状からの鑑別診断のプロセス,内視鏡検査の適応・禁忌,実際の検査の準備や大腸内視鏡挿入法も詳しく解説し,色素内視鏡,拡大観察,ダブルバルーン式小腸内視鏡,超音波内視鏡にいたるまで内視鏡関連領域がほぼ網羅されており,大腸肛門のみならず,小腸の内視鏡診断学にも踏み込んだ構成になっている.
本書の最大の特徴は,各論を疾患別の項目立てのみでなく,所見別の項目立てにも力を入れた点である.疾患別の特徴的な内視鏡診断学に加えて,ひとつの内視鏡所見から導かれる鑑別診断の実際と多くの参考症例・その解説がたっぷり盛り込まれた本書は,内視鏡鑑別診断学を系統的に習得するためにきわめて有意義であると確診する.ひとつひとつの内視鏡画像が,この道の再先端で活躍中の先生方による美しい最高のものである事も魅力的である.また,コラムが充実しているのも本書の特徴である.まれな疾患や,最新のトピックス,内視鏡診断上の技術的なコツとpitfallに関して,かゆいところに手が届くように解説されており,内視鏡診断学に必要なポイントが包み隠さず記載されている.
《目次》
I.総 論
1.症状・身体所見から何を考えるか
腹痛と病態生理/便通異常/下血/腹部膨満感(abdominal distension, abdominal fullness)/発熱
2.内視鏡検査の適応と禁忌
下部消化管内視鏡検査の心構え/適応と禁忌/インフォームド・コンセント/偶発症
3.内視鏡検査の準備
前処置/前投薬/使用するスコープの特徴と選択/内視鏡機器の再生処理
4.部位別解剖と正常内視鏡像
大腸の走行と部位別解剖/大腸の正常組織所見と血管支配
5.大腸内視鏡挿入観察法
スコープ操作の基本/内視鏡挿入法について/内視鏡観察の基本
6.小腸内視鏡挿入観察法 --- ダブルバルーンを中心に
原理/ダブルバルーン電子内視鏡システム/挿入方法/ダブルバルーン内視鏡による観察
7.色素内視鏡
色素内視鏡の種類,原理,特徴/色素撒布の方法とコツ
8.拡大観察
拡大観察の臨床的意義/拡大観察を始める前に/拡大観察の手順と手技/コントラスト法による拡大観察/染色法による拡大観察/拡大内視鏡観察と実体顕微鏡観察によるpit pattern一致率/通常内視鏡観察と拡大内視鏡観察によるpit pattern一致率/コントラスト法と染色法によるV型pit patternの診断能
9.超音波内視鏡(EUS)
検査の基本/正常層構造/おもな疾患
II.診断のプロセス
1.形態を表現する用語
2.大 腸
隆 起/ひだ/陥凹/アフタ・びらん/潰瘍/色調/血管透見/変形,狭窄・狭小化
3.小 腸
隆起/アフタ・びらん/潰瘍
III.疾患別内視鏡像
1.大腸・小腸
大腸癌取扱い規約の分類/大腸腫瘍のpit pattern分類/大腸ポリポーシスの内視鏡診断/大腸リンパ増殖性疾患の分類/GIST(Gastrointestinal Stromal Tumor)/潰瘍性大腸炎の内視鏡所見/潰瘍性大腸炎のMatts内視鏡分類/大腸Crohn病の内視鏡所見/小腸Crohn病の内視鏡所見/感染性腸炎の分類と鑑別/虚血性腸炎(重症度分類)/薬剤性腸炎の分類と特徴/腸の血管性病変の分類
2.その他
Cap polyposisと粘膜脱症候群/内視鏡医が知っておくべき肛門病変
コラム
生検すべき場所(大腸)/大腸腫瘍と生検/鉗子触診(下部)/EMRの適応病変/粘液の洗浄/空気量/大腸病変術前のマーキング/大腸癌のハイリスクとは/クッション・サイン/PG・NPG(大腸腫瘍の発育様式)/LSTとは?/V型pit pattern・箱根コンセンサス/serrated adenoma/Aberrant crypt foci (ACF) とは/悪性黒色腫の大腸転移/blue rubber bleb nevus(BRBN)/静脈硬化性大腸炎/Collagenous colitis/過敏性腸症候群/NBI/sm癌の浸潤度実測の方法/カプセル内視鏡/AIDSの下部消化管病変
目次
1 総論(症状・身体所見から何を考えるか;内視鏡検査の適応と禁忌;内視鏡検査の準備 ほか)
2 診断のプロセス(形態を表現する用語;大腸;小腸)
3 疾患別内視鏡像(大腸・小腸;その他)
著者等紹介
丹羽寛文[ニワヒロフミ]
聖マリアンナ医科大学客員教授/日本消化器内視鏡学会理事長
田中信治[タナカシンジ]
広島大学光学医療診療部部長/助教授
長南明道[チョウナンアキミチ]
仙台厚生病院消化器内視鏡センター長
田尻久雄[タジリヒサオ]
東京慈恵会医科大学内科学講座消化器・肝臓内科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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