出版社内容情報
《内容》 近年消化管に関する重要な発見や新たな概念の導入が相次いだ.Helicobacter pyloriの胃十二指腸病変における関与が明らかになり,MALTリンパ腫や胃癌との関連も明らかになりつつある.表面型大腸腫瘍が多数発見されるようになり,大腸癌の組織発生に一石を投ずるとともにその組織診断基準がわが国の病理医間で一致しないことが問題となった.癌における遺伝子解析も大腸癌がモデルとなって進んでいる.消化管粘膜下腫瘍にGIMTの概念が導入され腫瘍の組織発生が再検討されている. また電子内視鏡,拡大内視鏡や超音波内視鏡などの画像診断機器が大変進歩し,それに裏付けられた消化管病変の診断技術も近年飛躍的に向上した.この診断技術を利用して内視鏡的ポリープ切除術や粘膜切除術なども盛んに行われるようになった.消化管疾患を病理の立場からながめてきた者にとっても,この刺激的で,知的興味の尽きない時代に身を置き活動できた幸せを感じている. 本書は雑誌『臨牀消化器内科』に連載された「消化管病理標本の読み方」を基にしているが,21世紀の病理診断を担う若手の病理医に大部分の項を分担して頂いた.当然のことながら先に触れた新たな発見や概念についても漏れなく記載したつもりである. 本書は内視鏡医のために書かれた生検病理標本の解説書である.内視鏡医が病理診断報告を得た時に,報告書を参考にして自ら標本を検鏡し病理診断を確認する際に役に立つ病理標本の見方を解説することが,本書の目的とするところである.内視鏡医のみならず消化管の病理診断が不得意な病理医や,これから病理医を目指す初学者にとっても参考になる解説書であると思う. カラーの組織像とそれを説明する白黒の像がセットになった解説方法は今までの病理標本の解説書にはない独特の方式である. 《目次》 I.生検標本の取扱い方 I.消化管の生検材料 II.病理組織標本作製 1.固定 2.切り出し 3.Hematoxylin-eosin(HE)染色標本 4.特殊染色 III.顕微鏡 1.光軸 2.コンデンサー 3.対物レンズ 4.マイクロメーター 5.偏光レンズ IV.標本を顕微鏡のステージに乗せる前に 1.病理標本と依頼書の照合 2.標本個数の確認 3.標本範囲の確認 4.依頼書内容の把握 5.既往標本の再検討 V.依頼書の記載について 1.臨床診断 2.患者の主訴や臨床経過,治療の既往等 3.採取部位と採取個数 VI.生検標本の採取部位の推定と評価 1.生検材料の採取部位の確認 2.生検材料の評価II.ポリペクトミー・粘膜切除(EMR)の取り扱い I.標本の取り扱い方 II.切り出し方 1.ポリペクトミー標本 2.EMRの場合 III.切除断端の見方 1.ポリペクトミーの場合 2.EMRの場合III.食道 I.生検標本の評価 II.扁平上皮癌とその鑑別診断 1.異形成(dysplasia) 2.上皮内癌(carcinoma in situ) 3.上皮内癌と異形成との鑑別点 4.進行癌(advanced cancer) III.食道炎・食道潰瘍 II.バレット食道(Barrett esophagus)IV. I.胃生検標本の見方の実際 II.胃腺腫 1.扁平腺腫(flat adenoma) 2.大腸型腺腫(adenoma, colonic type) 3.胃型腺腫(adenoma, gastric gland type) III.胃癌 1.腺腔形成のみられる胃癌の診断 2.腺腔形成のみられない胃癌の診断 IV.胃腺腫,胃癌と鑑別を要する病変あるいは胃癌の診断が困難な病変 1.悪性リンパ腫と鑑別が必要な未分化癌 2.異型を示す血管内皮 3.MALTomaにおける変性腺管 4.印環細胞癌に類似した形質細胞 5.胃腺窩上皮細胞に類似した腺癌 6.腸上皮化生に類似した腺癌 7.乳癌からの転移IV.胃 b.非腫 性疾患 I.Helicobacter pyloriと胃粘膜 II.慢性(萎縮性)胃炎 III.胃底腺の萎縮性胃炎(A型胃炎) IV.腸上皮化生 1.完全型腸上皮化生 2.不完全型腸上皮化生 V.びらんと潰瘍 VI.再生上皮と再生粘膜 VII.粘膜下異所性胃腺 VIII.過形成性ポリープ IX.胃底腺ポリープ(fundic gland polyp) X.胃黄色腫(gastric xanthoma) XI.異所性膵組織と膵化生V.消化管の悪性リンパ腫 I.胃MALTリンパ腫の診断基準と実際 II.大細胞型リンパ腫について おわりにVI.Gastrointestinal mesenchymal tumor (GIMT) I.GIMTの病理組織像 1.筋系由来のGIMT(so called leiomyoma) 2.神経系由来のGIMT II.GISTの病理組織像 III.核異型について IV.小腸のGIMT おわりにVII.消化管のカルチノイド腫瘍 I.カルチノイド腫瘍の基本構造 II.カルチノイド腫瘍の組織診断 1.生検材料における診断の実際 2.切除材料における断端の取扱い 3.手術材料における診断 III.カルチノイド腫瘍の取扱い IV.異型カルチノイド腫瘍および内分泌細胞癌―内分泌細胞腫瘍の概念VIII.十二指腸・小腸 I.十二指腸の隆起性病変の肉眼的鑑別診断 II.Brunner腺腫・過形成(Brunner gland hyperplasia) III.異所性胃粘膜(heterotopic gastric mucosa) IV.十二指腸腺腫(duodenal adenoma) V.十二指腸癌(duodenal cancer) VI.カルチノイド(carcinoid) VII.Gangliocytic paragangliomaおわりにIX.大腸 a.大腸癌を含む上皮性腫 I.大腸腺腫(colorectal adenoma) 1.管状腺腫(tubular adenoma) 1)軽度異型腺腫 2)中等度異型腺腫 3)高度異型腺腫 2.粘膜内高分化腺癌 3.鋸歯状腺腫(serrated adenoma) 4.絨毛腺腫(villous adenoma) 5.表面陥凹型腫瘍の病理組織診断おわりにIX.大腸 b. 非腫 性疾患 I.若年性ポリープ(juvenile polyp) II.過形成ポリープ(hyperplastic polyp) III.Peutz-Jeghers(type)polyp IV.Peutz-Jeghers syndrome V.炎症性ポリープ(inflammatory polyp)と炎症性ポリポーシス(inflammatory polyposis) VI.粘膜脱症候群ならびに類縁疾患 1.粘膜脱症候群(mucosal prolapse syndrome) 2.限局性深在性嚢胞性大腸炎(localized colitis cystica profunda) VII.炎症性筋腺管ポリープ(inflammatory myoglandular polyp) VIII.大腸憩室症IX.大腸 c. 大腸炎症性疾患 I.潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis ; UC) 1.活動期 2.回復期 3.緩解期 4.異型上皮II.クローン病(Crohn's disease ; CD) III.その他の炎症性腸疾患 1.細菌性大腸炎(bacterial colitis) 2.放射線性腸炎(radiation induced enterocolitis) 1)早期障害 2)晩期障害 3.抗生物質起因性大腸炎(antibiotic associated colitis) 1)出血性大腸炎(hemorrahgic colitis) 2)偽膜性大腸炎(pseudomembranous colitis) 4.虚血性大腸炎(ischemic colitis) 1)エルシニア腸炎(Yersinia enterocotitis) 2)アメーバ赤痢 3)Diversion colitis 4)粘膜脱症候群
内容説明
本書は内視鏡医のために書かれた生検病理標本の解説書である。内視鏡医が病理診断報告を得た時に、報告書を参考にして自ら標本を検鏡し病理診断を確認する際に役に立つ病理標本の見方を解説した。
目次
1 生検標本の取扱い方
2 ポリペクトミー・粘膜切除(EMR)の取り扱い
3 食道
4 胃
5 消化管の悪性リンパ腫
6 Gastrointestinal mesenchymal tumor(GIMT)
7 消化管のカルチノイド腫瘍
8 十二指腸
9 大腸