目次
第1部 ロシアとウクライナ(ロシア史における『ドラキュラ物語』;シチェルバートフによる専制批判;18世紀ロシアの地方社会;ガブリール・デルジャーヴィンのユダヤ人に関する『意見』;G.F.v.パルロットとロシアの大学;19世紀ロシア農民の大地信仰;19世紀末東シベリア農村における郷行政;M.フルシェフスキイのロシア史学批判について)
第2部 東欧と北欧(正教会の聖霊論の特質;13世紀ポーランドの都市改革と「ドイツ法」;18世紀ポーランドにおける国制改革の歴史的意義;ミロシュ・オブレノヴィッチの治世における教会・修道院とセルビア人の生活;バルカン研究の視点と課題;併合前後のボスニア・ヘルツェゴヴィナにおける民族運動;「反露主義者」アールミン・ヴァームベーリ;R.W.シートン・ワトスンの思索と業績に関する一考察;大戦間期におけるデンマークの国境観)
第3部 日本とスラヴ世界(アレクサンドル二世暗殺末遂事件と日本人;日露戦争中の日本・ポーランド軍事協力)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Toska
9
1992年に出た古い論集だが、フルシェフスキーのウクライナ史学を取り上げた論考(阿部三樹夫)が収められている貴重な一冊。自前の国を持たないウクライナの歴史を把握する上で、フルシェフスキーは国家・政治的な要素を相対化し、経済・文化的要因と「ナロード(民衆)」を重視した。こうしたアプローチは、国制史に絡め取られた歴史観へのアンチテーゼとして有効である一方、実証性に乏しく主観的な方向へ流れる危険性も秘めているように思う。いずれにせよ、今後深められるべき論点であることは間違いない。2024/01/01