出版社内容情報
夏休み。イタリア国境近くのスイスの山中で合宿をしていた男子生徒たち。そこで何者かに合宿費用が盗まれるという事件がおこる。「イタリア人の労働者カネヴァリが犯人に違いない」と言う警官の言葉をきっかけに、先生をリーダーにした犯人追跡が始まった。一方で、父親がイタリア人のジルヴィオだけが乗り気ではない。正義感から始まった行動の結末は、はたして...。
著者等紹介
シュタイガー,オットー[シュタイガー,オットー] [Steiger,Otto]
1909‐2005。第二次世界大戦中から、ラジオのニュース・アナウンサーとして活躍する一方、大人向けの作品を発表してきたスイス人作家。1974年にでた『泥棒をつかまえろ!』は彼の初めての児童書で、シュタイガーは、この作品の成功後、自分が経営していた商業学校から手を引き、作家活動に専念することになる。その後も十数冊児童書を書き、スイス児童図書賞などを受賞。新聞、雑誌のコラム欄担当、スイス・ペンクラブの会長職を務めるなど、スイス文壇で活躍した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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lovemys
9
冒険譚かと思ったら、なんと! 集団心理の恐ろしさや、誰かが責任をとってくれるだろうと無責任に加担する恐ろしさ。多数の意見に何も言えず、ついつい従ってしまう恐ろしさ。偏見と差別と無知が、どんなことを引き起こしてしまうのか。それをまざまざと見せつけられた。どうしてそんな事をしてしまったのか自分でも分からず、後から理由付けしてしょうがなかったと自分を騙したり。人間の弱さが露わに描かれている。何とも言えない後味の本だけど、教訓として覚えておこう。人間は弱く、集団になると自制するのが難しい。恐ろしいね。2021/10/29
kana
6
中2長女に童話館から。夏休みにスイスの山に引率された男の子たちが先生と一緒に盗まれたお金を求めて1人の男を追いかける…てっきり少年たちによる痛快な探偵ごっこ的なのかな、と思ったら…なんだろう、面白いんだけど、おいおい、そんな展開?というか、人種差別やいじめ、集団であるが故の心理状態であったり、色々と考えさせられる。だからこそ中2での配本なんだな、と。早とちりは恐ろしい2017/09/16
morgen
2
表紙ののどかな風景からは想像もつかない重たい内容だった。70年代スイスが舞台。都会の男子高のあるクラスが合宿に出掛けた先で、合宿費のお金がなくなってしまう。一行はお金を取り返すべく、犯人と思しきイタリア人を追いかけ、アルプスの山荘へ向かう。貧富の差と差別意識、そして何より集団心理の怖さを教えてくれる作品。みんなが冷静に自分の頭で考えないと、ヘイト・クライムはなくならない。自分もしっかりしなきゃ、と思わされた。中高生以上向き。2021/08/16
裕由
2
童話館ぶっくくらぶから娘に届いたもの。表紙の写真の美しさとタイトルのギャップを感じながら何気なく手にしてみたものの,人間の集団心理の脆弱さを問いかけたり,人種的な偏見を垣間見せたりする,しっかりとした本でした。随分と昔に発刊された本のようですが,多くの人が様々な考えを巡らせるという機会を得られるのはよいことだと思います。 2018/08/25
ベロニカ
1
わりとイメージが題名に依存されてあまり読む気がしていなかったけれど、内容は題名からは想像しにくいものだった 2020/06/03