出版社内容情報
1931年、フランスで教育運動のひとつとして企画された廉価版の絵本「ペール・カストール」シリーズには、すぐれた作品が発表されましたが、なかでも、リダ・フォシュ文、フェードル・ロジャンコフスキー絵による作品は、今でも高く評価されています。
本作は、その一冊。「フルーは、ひとりぼっちになってしまった野うさぎです。おとうさんは、きつねに食べられてしまいました。いもうとは、ふくろうにさらわれました。」おかあさんも、しばらくすると、フルーをおいたまま帰ってこなくなりました。それが、野うさぎの世界の決まりごとなのです。そうやって、一人で生きていくことを学びます。フルーも、緑多い春を楽しみ、実り豊かな秋を喜びます。そんなある日、めすの野うさぎ、キャプシーヌに出会います。それからの日々の、なんと輝いていたことでしょう。
ところが、ある日、うさぎ狩りが始まりました。鉄砲の音と犬のほえる声が聞こえます。二ひきは別々の方向へ逃げます。その時から離れ離れとなりました。やがて、きびしい冬がやってきました。フルーは食べ物をどうにか探し当てながら、しのいでいきます。そして、また、春がやってきたのです。フルーが緑の林に入っていった時です。なつかしいにおいを、そよ風がはこんできました。フルーははねていって、あの、めすの野うさぎと、顔をつきあわせたのです。ああ、なんと幸せなことでしよう!
「ペール・カストール」シリーズは、いずれも、自然の中で暮らす小さな生き物たちの、日々の喜びと、生きていくための過酷な試練と、そして生と死を、美しいロジャンコフスキーの絵とともに謳(うた)いあげます。 (K)
およそ7~8才から
内容説明
生きものの生態とドラマを、清冽に描く5連作。1930年代初版(フランス)の原形のままに、翻訳を見直しての復刊。
著者等紹介
フォシェ,リダ[フォシェ,リダ]
1899~1955。チェコスロバキア・プラハに生まれる。若い頃より、恵まれない立場にいる子ども達への教育にかかわった。そのことを通して、『野うさぎのフルー』のシリーズのもとになる『カストール叢書』の著者ペール・カストールと出会う。のち、彼と結婚し、以後、このシリーズは、夫妻の共同の仕事となった。パリにて他界
ロジャンコフスキー,フェードル[ロジャンコフスキー,フェードル][Rojankovsky,Feodor]
1891~1970。ロシア・ミタワに生まれる。イラストレーター、作家。自然に親しみながら、長じてモスクワ美術学校に学ぶ。1914年から1917年にかけ、陸軍に画家として役した後、ロシア革命の間、ウクライナの子どものための本に挿絵を描き始めた。内戦から逃れてフランスに渡り、パリに身を寄せた。そこで、アメリカの編集者に見出だされ、次いで、リダ・フォシェとの出会いから、『野うさぎのフルー』のシリーズの絵を手がける。挿絵を描いた作品は100点にものぼるが、そこには、いずれも、いきいきした色彩、ゆたかな自然観察という、彼の絵の特質を見ることができる。コルデコット賞受賞画家
いしいももこ[イシイモモコ]
1907~。浦和市に生まれる。日本女子大学卒業後、編集者として出版社に勤務。その後、こどもの本の翻訳家、作家として、戦後まもなくの、わが国児童文学界の草分けのひとりとなる。その功績により、1953年、菊池寛賞受賞。以後、現在にいたるも、わが国児童文学界の最高峰に位置する。自宅の一室を開放した「かつら文庫」を、長年、主宰してきた
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感想・レビュー
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