目次
原子童話
雪崩のとき
祖国
感想
挨拶
天馬の族
繭
夜話
百人のお腹の中には
よろこびの日に〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
215
石垣りんの第一詩集(1959年・書肆ユリイカ)。「私たちの前にあるものは 鍋とお釜と、燃える火と」と、高らかに歌い上げる。権力に飲み込まれることもなく、反戦の志を持って平和を願い、しかもそれは観念的なものに堕することなく、まさしく一人の個人から発せられた言葉が紡がれる。生活詩のように見えるかもしれないが、詩人の感性はそこから発して、高みに飛翔して行く。しかし、けっして高みから見下ろすことはない。時々は「生きる」者のユーモアさえも垣間見せる。深刻な詩である時でさえ、あるいはそんな時であるからこそ⇒2025/11/07
瑪瑙(サードニックス)
35
石垣りんさんのお名前は存じ上げていましたが、作品は読んだことがありませんでした。紹介してくれた読友さんに感謝です。衝撃的でした。こんなにも鋭い感性と鋭い言葉で綴られた詩を知りません。胸の内に突き刺さって言葉がありませんでした。2022/05/12
おおた
10
60年前の銀行員の言葉は今でも刃物のように鋭く、うずたかく詰まれたわらのように暖かで、北風のように厳しく、南風のようにやさしい。俳句ではそれまで詠まれた句の全てを前提として詠まなければいけないと聞いたが、わたしたちも石垣りんの言葉を踏まえて学び働き生きるべき。2014/12/16
SIGERU
6
石垣りんを久しぶりに読みたくなり、三冊続けて読了した。総括としてレビューしてみたい。1920年生まれのこの詩人は、私にとって、平易な言葉で鋭く人生を剔抉してみせる偉大な先達。それでいて、何でも話せそうな気さくなおばさん。そんな存在だった。「私の前にある鍋とお釜と燃える火と」「シジミ」「表札」「崖」などの名品は彼女の詩作を代表するもので、これだけを読んでも充分、石垣りんという天性の詩人の凄味を知ることができる。思潮社の「石垣りん詩集」でのみ彼女を知っていた私もまた、そう思い込んでいた一人だ。2017/10/08
Э0!P!
5
戦後に書かれた詩集だけあってふとした日常風景から戦争の無念さへとつながっていく詩が多いが、同調圧力に対して立ち向かう強い意志と力で人が進むべき倫理の道を謳いあげている。70年前にここまで正しいことを言う日本人がいたにもかかわらず、現代日本の非倫理的なていたらくぶりをみてしまうと、美しい詩と対比して、人の心の頑なな様が際立ち物悲しく見えてくる。2025/10/29




