内容説明
1989年6月。妻の死後、ポールは思い立ったようにギリシャを訪れる。妻と過ごした半生を振り返り、その思い出を捨て、新たな一歩を踏みだすために。1995年6月。父ポールの死後、フェンノは久しぶりに故郷スコットランドに帰る。その旅で、それまで気づかなかった、エイズで亡くなった友人と家族への深い愛に気づかされる。1999年6月。ファーンは恋人の子供を身ごもっているが、それを伝える勇気がない。しかし、フェンノに勇気づけられて、新たな愛を育てる決心をする。大切な人の死を乗り越えようともがく人々の、愛と喪失、後悔と希望に満ちた人生が複雑に絡み合い交差する。心のいちばん深いところに届く人生の物語。1999年トバイアス・ウルフ・アウォードを受賞(『コリーたち』)。2002年全米図書賞を受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
67
六月を舞台にした、フェンノを中心に緩やかに繋がり合っている三つの話。フェンノの家庭環境と彼の個人的な状況には幾分やややこしいところはあるが、取り立てて派手な出来事が起きるわけではなく、過去の回想、悔い、分かり合えずにいる家族への不満などが、静かな調子で綴られていく。六月というと、夏へと向かう明るく希望に満ちた月。その月を選んで三つの話を描いたということは、すべての話に明るさがあるということ。孤独癖のある気難しいフェンノにさえも。2019/03/01
星落秋風五丈原
26
原題はThree Junes=三つの6月でストーリーそのままの素直なタイトル。しかし邦題もいい線行っている。第一章に旅先でポールが知り合った女性として登場するファーンは、第三章で主人公=主旋律に躍り出るし、回想の中に登場するポールの息子フェンノは、第二章では主人公=主旋律で第二章が三つの中で最もボリュームが多い。フェンノを通じて第一章と第三章の主人公が繋がっているからか。自信の体験を若干アレンジして登場人物に投影。組曲というタイトルに相応しい。2002年全米図書賞を受賞。2017/09/22
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