内容説明
信仰ゆえに孤独に身をおくイギリス人牧師オスカー。遺産でシドニーのガラス工場を買いとり経営する孤児ルシンダ。それぞれにギャンブルと出合い、のめりこんでいった2人の出会いと数奇な運命を、19世紀のイギリスとオーストラリアを舞台に描く長編。13カ国語に翻訳、ブッカー賞受賞作、待望の翻訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
188
イギリス生まれのオスカー。彼は聖職者になるべく生まれたのだが…。彼のとる行動がいちいち度胆をぬく。そしてオーストラリア生まれのルシンダ。彼女は孤児となってどのように生きようとしたのか。2人とも、心の隙間を埋めるように賭けにはまる。2人に感情移入している読者はそれを心痛めずには読みすすめられない。そして、二人が交錯し、とんでもないことが次々と…。少しまどろっこしいが、大英帝国の流れを汲む作家が開拓された土地の目を交えて描く世界に私は魅了された。読者を選ぶとは思うが、私はおすすめしたい作品。2017/03/09
まふ
106
オーストラリアの実力作家によるラヴ・ロマンス巨編。英国牧師の息子オスカーがオクスフォード大学に進み牧師となるが、競馬にはまり小金を貯め賭け事にも手を出す。牧師となってオーストラリアに赴任する。一方オーストラリア生まれのルシンダは父母の不慮の死により巨万の富を受け継ぐものの、空疎な心のままギャンブルを楽しむ。二人は賭け事で意気投合しお互いに惹かれ合うものの形に現れないまま時が流れる…。⇒2025/04/13
きりぱい
10
なんともスケールの大きい、長い幻想を見せられたような不思議な読後感。19世紀、イギリスの田舎で育つオスカーの物語と、イギリスの植民地オーストラリアで育つルシンダの物語は、片や敬虔で無垢すぎる牧師、片や遺産で不自由はしないが心は孤独と、境遇の違う二人をギャンブル熱が引き合わせ、いつしかひとつの物語となる。片方の主役オスカーを筆頭に癖のある人物が多く、決して安穏とはいえない運びながら、どこかユーモラスで、なごませるゆったりさもみせていたのに、愛情を裏打ちする大きな賭けが招く思わぬ展開には言葉がなく・・。2010/11/11
Mark.jr
3
若き神父ながら、ひょんなことから賭博に填まってしまったオスカー。莫大な遺産を相続しながら、これまた賭け事に填まってしまったルシンダ。この二人の風変わりな恋愛譚を軸に、オーストラリアという土地とキリスト教社会への皮肉やブラックユーモアを交えた、著者らしい作品です。2019/11/24
takeakisky
1
ノックアウトされた。人物、場所、いづれも境界線を越すか越さないかという、ぎりぎりのとても良いところを突いてくる。こんなにチャーミングなずれ方をした人々をよくぞ創造したものだ。ずっとどこか胸苦しく、普段あまり使わない感情が刺激される。読み進めるのが勿体ない。終盤の奇跡のような光景に胸がいっぱいになる。そして最後は、背筋を静かに上がってくる鳥肌。深い喪失感。2023/03/18