出版社内容情報
本邦初のイタリアの黒死病(ペスト)関係史料の翻訳。時代は中世末期(14世紀)~近世の,年代記・日記・覚書き・都市条例・書簡・例話・教会の台帳・絵画注文の規約書・市民が書いた遺言書等々多岐にわたり,原典はラテン語・イタリア語計51点。本書による今後の中・近世史の新展開が期待される
◆史料の言語の内訳はラテン語史料41点,イタリア語史料10点である。
すべて原典からの翻訳である入手しにくい史料のほか,内容的に貴重な史料も
少なからず含められている
◆これまで日本で黒死病関係の史料として引用される原典は,ボッカッチョの『デカメロン』の
序文ばかりであったのが,本書の刊行によって非常に史料の幅が広がる
◆翻訳が平易で大変読みやすい
◆黒死病の出来事を記載した年代記の記事などの短い史料のほか,第10部『死者台帳』の
ように初出の研究雑誌で87頁に及ぶ1点の史料もある。何点かは,古文書館に依頼して
史料を得たものもある(サン・ジミニャーノ古文書館の契約書,ローディ司教館の遺言書
など)
◆「比較参考史料」としてフランス,イングランド,ドイツなどの史料を加えることで,イタリアの
史料と比較した(第7章,第15章)
【略目次】
第1部 1347年の黒死病の到来
第2部 1348年の黒死病に襲われたイタリア中部(トスカーナ地方)
第3部 黒死病とサヴォイア公領のユダヤ人の迫害
第4部 例話に見る心性――高まる煉獄への恐怖
第5部 コムーネの疫病条例
第6部 トレチェントの黒死病を生きた人文主義者ペトラルカ
第7部 いかにして疫病に対処するか
第8部 ルネサンス人文主義者の疫病論
第9部 大規模ペスト期の苦難を生きる
第10部 『死者台帳』
第11部 大規模ペスト期の市民の遺言書
第12部 15世紀の黒死病――小規模ペスト期
第13部 黒死病と絵画の注文
あとがき/注・参考文献(欧文・和文)
【編訳者紹介】
石坂尚武 (いしざか なおたけ)
1947年千葉県生まれ。
現在,同志社大学教授。博士(文化史学:同志社大学)
著書:『ルネサンス・ヒューマニズムの研究』晃洋書房,1994年/『地獄と煉獄のはざまで』知泉書館,2016年,他多数